2016 Fiscal Year Research-status Report
コーカサス新石器文化の起源:中石器遺跡の検討(国際共同研究強化)
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15KK0044
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
有村 誠 東海大学, 文学部, 准教授 (90450212)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | アルメニア / コーカサス / 新石器化 / 中石器時代 / 黒曜石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、これまでに調査で得られた考古学資料の分析を進めるとともに今後新たに中石器遺跡の発掘調査を実施することで、アルメニア中石器文化の実態を解明することにある。これによりコーカサスにおいて農耕社会(新石器文化)が出現する際に、在地の中石器集団が果たした役割が明らかになると考えられる。また本研究で得られる成果によって、農耕の拡散という汎ユーラシア大陸で起こった現象の実態について理解する一助になることが期待される。 今年度は、アルメニア科学アカデミー考古学民族学研究所において、2015年に試掘調査を実施したレルナゴーグ遺跡出土の石器資料の分析を行った。特に、アルメニアの中石器遺跡に特徴的な石器であるカムロ・トゥール(Kmlo tool)の用途を特定するために使用痕分析を試みた。カムロ・トールは片側または両側に急角度の調整加工が施された石器であり、2000年代初頭のカムロ遺跡の発掘調査ではじめて確認された石器器種である。アルメニアの中石器遺跡から普遍的に出土するが、その用途については未だ明らかでない。そこで、レルナゴーグ遺跡出土の石器16点を対象として金属顕微鏡による使用痕分析を試験的に行った。その結果、今回の分析は予備的なものであるが、現段階で数点のカムロ・トゥールにおいて石を対象とした作業を行った痕跡が明瞭に確認された。今後、具体的に石を使った作業とは具体的にどういうものであったのかという問題意識を持ちながら考古学調査に取り組む必要がある。以上の様な石器の分析で得られた結果・問題点は、2017年度以降の発掘調査で得られる資料でさらに検討していく。 2017年度にはアルメニアに長期間滞在し考古学調査を行う予定である。そのための研究体制や発掘調査の方針について、アルメニア側研究協力者と協議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルメニア側研究機関と密に連絡を取り、次年度以降の考古学調査のスケジュール、研究体制、成果報告の方針など、細部を詰めることができた。また、これまでの考古学資料の分析もおおむね終了し、2017年度以降に調査研究を進める準備が整っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度以降数年間かけて、アルメニアのレルナゴーグ遺跡の発掘調査を実施する予定である。また、2017年度はアルメニアで長期間調査研究を行うことができるので、レルナゴーグ遺跡の他にも複数の先史時代遺跡において、文化層の内容を確認するために試掘調査を行う予定である。一方で、これまでに発見した遺跡のいずれも本研究課題を進める上で十分な規模や内容をもたない可能性もあるので、他の遺跡を新たに発見するための遺跡分布調査(踏査)も実施したいと考えている。
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