2016 Fiscal Year Research-status Report
修道院と教区共同体の相互影響関係と社会形成に関する比較研究(国際共同研究強化)
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15KK0051
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大貫 俊夫 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30708095)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 西洋史 / 修道制 / 教会史 / 社会史 / シトー会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、若手研究(B)「修道院と教区共同体の相互影響関係と社会形成に関する比較研究」を発展させ、シトー会修道院が世俗社会の形成・持続的発展に果たした手段・役割をより総合的に明らかにするものである。その上でキリスト教修道制の歴史研究について、日欧を中心とした国際共同研究網を構築し、これを持続的な研究体制にすることを目指す。平成28年度の研究実績は以下の通りである。
1、本研究の目的として、中世の修道制がどのような価値・シンボルを農村・都市社会に発信していたのかを明らかにし、エストライヒらの「社会的規律化」概念が援用され得るか批判的に検証する、というものがあるが、とりわけ司牧環境の整備に焦点を当てて、シトー会士と農村・都市住民との関わりを検討した。これにより、シトー会士は世俗社会から距離を置く当初の理念を守り積極的に司牧を行うことはなかったが、農村・都市住民の司牧環境に配慮し、積極的に関与した実態が浮かび上がってきた。 2、アルプス以北の神聖ローマ帝国を対象に、シトー会修道院と教区教会の関係を示す刊行史料、未刊行史料の収集・分析を進めた。とりわけライン地方~フランケン地方、そして参考として南フランスの諸修道院に着目し、データベースの作成を行った。 3、国際共同研究の推進を図るため、渡航先のドレスデン工科大学比較修道会史研究所と連絡を密に行い、予定していた共同研究者に加え所長ゲルト・メルヴィル、事務局長クリスティーナ・アンデンナとも共同研究を進められることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人の研究に関しては、海外受入機関の豊富な蔵書を活用し、順調に個々のシトー会修道院に関する資料収集を進めることができた。それを元にデータベースの構築に着手し、今後これを量的に拡充していくためのフォーマットを作った。また、農村・都市社会の司牧環境に着目できたことは、今後の研究を推進するものとして大変意義深い。国際共同研究の推進については、受入機関との調整を行った上で年度末に渡航を開始し、今後の共同研究のあり方について議論を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航期間は2017年9月まで続く。受入機関の蔵書環境を活用し、引き続き個々のシトー会修道院についての史料・研究文献を収集し、精力的に分析していく。また、12~13世紀の司牧や説教、農村や都市における社会状況などの問題について研究史を追うことで、修道院研究に新たな論点を立てることが可能になろう。国際共同研究の推進に関しては、海外の研究者と学会・ワークショップなどで共同のセッションを立てることを念頭に、研究内容の調整と従来の枠組みを超えた新規的な問題設定を行っていきたい。
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