2016 Fiscal Year Research-status Report
Japanese Shakespeare in the New Millennium(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0053
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
エグリントン みか 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632410)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | シェイクスピア / 上演研究 / アジア / ヨーロッパ / 英国 / 日本 / オリエンタリズム / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年3月に英国・ロンドンへ海外出張に1週間赴き、ブリティッシュ・ライブラリー、ナショナル・シアター、グローブ・シアターを中心に、資料収集、演劇鑑賞、現地調査を行った。 加えて、2018年3月から研究代表者が渡英し、本格的に開始される国際共同研究強化プロジェクトについてのミーティングを、ロンドン大学ローヤルホロウェイ校の演劇学科のエリザベス・シェイファー教授と持った。教授が主宰する「女性を舞台の中心に挙げる」(“Putting women in the Centre Stage”)プロジェクトに参画することによって、未だ西洋男性中心主義が根強いシェイクスピア研究のパラダイムを女性の視点から軌道修正する(“Re-orienting”)目的と方法論を話し合った。その際、アメリカの漫画家アリソン・ベクデルにちなんで命名されたベクデル・テストというジェンダー・バイアス測定のために用いられるテストを、演劇に応用する際の有用性と問題点について議論が交わされた。ベクデル・テストでは2人以上の女性が登場するか、女性に名前がついているか、女同士の会話はあるか、その会話の中で男性に関する話題以外が出てくるかなどが問われるが、現代映画でも半分以下しかこれらの条件をパスしない。映画産業で働く女性の比率が低いことや、男性中心の嗜好の反映とされているが、少年俳優が女性役を演じたシェイクスピア時代の演劇についてはさらにパス率が低下する。現在進行形ゆえに把握し難い2000年以降、特に2005年のロンドン同時爆破事件、2011年の東日本大震災、2016年のEU離脱、2017年の英国国会議事堂テロ後における日本と英国のシェイクスピア翻訳・翻案作品の具体的な舞台例を交えつつ、お互いの意見を交換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年3月からプロジェクトを開始したため、1週間の成果を判断することが難しいが、ロンドンにおける海外リサーチが予定通り進んだことから、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は夏にポーランドのグダンスクで開催されるシェイクスピア国際学会、秋に日本シェイクスピア学会にて英語にて論文発表を行う予定である。2019年3月から渡英し、ロンドン大学を拠点に国際共同研究を本格的に開始し、シェイクスピアの演出史・受容史を、ユーラシア/'Euro-Asia'の間で行われる「輸出・輸入」 という視点から西洋と東洋の差異と相似を探る。 1)英国におけるアジア風・オリエンタル風シェイクスピア: 英国の劇場では、ジャポニズム、シノワスリーと形容できる東洋趣味が反映された舞台が時に起用される。ヨーロッパの演劇人が捉える西洋演劇=戯曲に対し、東洋=身体・演劇的伝統とする演出家の二項対立的な見方も鑑みながら、オリエンタリズムを照射する。 2)「(セルフ)オリエンタリズム」の要素が強いアジア産シェイクスピア: アジアを代表するシェイクスピア演出家と目されてきた蜷川幸雄演出を中心に、19 世紀末に日本へ「輸入」された西洋古典がいかに日本・アジアにおいて変容し、西洋化=近代化を経た日本から英国へと「輸出」、「逆輸入」されたのかを考察する。 3)「オキシデンタリズム」の要素が強いアジア産シェイクスピア: 西洋古典を金髪碧眼の西洋人を模倣して演じた宝塚歌劇団のシェイクスピア作品に焦点を当て、カツラと付け鼻をつけて西洋近代劇を演じた新劇の伝統にも通底する西洋中心・依存について考察する。男優が女役を演じたエリザベス朝演劇と女優が男役を演じる宝塚に見る異性装についても再考する。 上記の研究を発表し、論文や書籍にて発表することと並行して、"The Japan Times"等のメディアに引き続き劇評を寄稿しながら、劇場を始めとする文化施設と大学を始めとする研究・機関の接点をクリティカルかつクリエイティブに模索していく。
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