2016 Fiscal Year Research-status Report
ライシテ(非宗教性)と宗教の公共性-ーフランス、ケベック、日本を事例として(国際共同研究強化)
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15KK0055
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
伊達 聖伸 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90550004)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | ライシテ / 政教分離 / フランス ; ケベック ; 日本 / 宗教学 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス、ケベック、日本をフィールドとして、「ライシテ」(非宗教、政教分離、世俗主義)の歴史を批判的に再検討し、宗教の公共性について考察を深め、共生社会の原理を再構成することを目指すものである。2016年度は、おもに2017年度に渡航先で行なう研究のための準備段階として、以下の成果をあげた。 1.間文化主義的なライシテの起源の探究と社会における受容の検討については、ブシャール=テイラー委員会報告書を系譜学的に理解し、近年の動向やフランスとの状況の連動を探ることを目標に掲げていた。これについては、「ケベックにおける間文化主義的なライシテ」と題する論文を『思想』に発表し、間文化主義的なライシテが論争にさらされる性質のものとして2000年代に「誕生」したことを示した。 2.フランス系文化を中心とするナショナリズムの立場に立つフェルナン・デュモンと間文化主義の観点から多数派と少数派の調停を説くジェラール・ブシャールの比較も取り組むべき課題と位置づけていた。これについては、翻訳出版したフェルナン・デュモン『記憶の未来』の「訳者解説」において両者を比較し、社会のアイデンティティを支える記憶の再構成・再編成のダイナミズムの一端を解明した。 3.フランス、ケベック、日本のライシテの比較については、(1)フランスとベルギーとケベックのライシテを比較するシンポジウムで発表を行なったことを特筆したい。(2)また、日本のライシテについても考察を進め、宗教学者・岸本英夫が戦後日本の「ライシテ」体制の構築において果たした役割をフランス語論文にて執筆したほか、現代日本の政治の領域における宗教復興と見られる動きについて英語論文を執筆した。 また、2017年2月にモントリオールに短期滞在し、共同研究者のミシュリーヌ・ミロ教授と来年度の研究計画について打ち合わせを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、基本的には来年度に向けての準備段階と位置づけていたが、すでにいくつかの成果を挙げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、1年間という比較的長期にわたる現地滞在を活かして、これまでは基本的には文献調査をもとに、断続的にしか行なうことのできなかった研究を大きく進めたい。
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