2016 Fiscal Year Research-status Report
18 ~20世紀の糸・布・衣の廉価化をめぐる世界史(国際共同研究強化)
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15KK0059
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
杉浦 未樹 法政大学, 経済学部, 教授 (30438783)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 世界史 / 織物 / 衣服 / 廉価化 / 価値 / ファッション / グローバルヒストリー / 消費史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは、大きく「衣のグローバル化」であり、もっぱら洋装化を重点に単線的な伝播として語られてきた衣のグローバル化を、1.循環・2.ヨーロッパ基点(洋服のグローバリゼーション)・3.非ヨーロッパ基点と多層的に構成しなおして分析することにある。今年度は1.2.3.それぞれについての準備を行った。 1.循環(グローバルな衣裳と絵画の誕生)では、2016年12月より、来年度東京・京都・福岡三か所で実施予定のシンポジウムを準備した。共同研究者プリンストン大学のダコスタカウフマン先生と連絡を取るとともに、それらシンポジウムに参加する総勢25名の研究者と意見交換・共同調査しながら1540-1760年の東アジアを中心とする絵画と衣裳の循環について研究発表する構想を整えた。2017年3月には京都工芸繊維大学の協力者と京都において打ち合わせし、研究代表者自身の研究分担として天正少年使節のキモノを長崎・大村で資料調査した。 2.ヨーロッパ基点について、共同研究者のウォーリック大学のリエロ先生と夏の国際学会で近世期の奴隷布・衣のセッションを開催した。19世紀以降については経営史的アプローチを進めることで合意した。その前準備として3月に京都大学でグローバル・ファッションビジネスを研究する国内とオランダの研究者と研究会を行い、発表した。 3.非ヨーロッパ基点の発信については、オランダ・イギリス・日本・スイスなどが東西アフリカへ輸出したなかでファッションとして培われた「アフリカンプリント」を、特に日本の関わりを焦点に研究を推進している。2017年2月に国内共同研究者である鈴木桂子教授・上田文研究員と4日間オランダ企業Vliscoで集中的に共同資料調査を行った。その成果を2017年3月に論考と研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展した要因は複数あるが、まとめるとテーマについて学会パネルや国際ジャーナルに応募したところ採択され、核となる共同研究者を拡大して緊密な研究がすすみつつあることである。まず、1.2018年8月開催のWEHC(世界経済史会議)へのパネル提案が採択された。2.2017年度に予定していた「循環」についての会議について参加者が多く、当初以上に拡大でき、分析枠組みが固まった。さらに3.その循環について、研究代表者が共著論文として国際ジャーナルに要旨採択された。4.「アフリカンプリント」の共同研究が国内研究協力者との緊密な共同調査作業が継続し、かつ国際学会を通して関連研究者とネットワークを広げることができた。 その一方で、共同研究者のリエロ氏が杉浦が渡航を予定していた2017年にサバティカルが決まり渡航できなくなり、2018年後半に移した。またもう一人の共同研究者プレストホールド氏も家族の事情で2017年後半に来日することになった。このような予定変更はあったが、上記に掲げた、当初の計画以上に研究を進展させる事柄もあったので、予定を再調整して、さらに研究が進展する計画にできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は構想準備段階で、来年度、3つのサブテーマのうちの1「循環」と3「非ヨーロッパ基点の発信」について、共同研究者と集中的な資料調査と討論会を行い、国際シンポジウムを複数開催することで、共同研究を成果発表段階に引き上げる。こうした成果の共同発信が速やかに行われるように、法政大学比較経済研究所と協力するようにした。 具体的には1.「循環」ではGlobal Costume & Global Art"と題して、7月26日に京都で絵画と織物の循環に注目した Global Circulations and Transformations: Art and Textile in East Asia 1540-1760、7/29-30に福岡で衣裳を論じる"Global Costume: Kosode, Dofuku, Banyan, Kebaya and Japanse Rok 1500-1900. A dialogue of Global Circulation between Art History, Economy and Material Culture、東京で歴史学の方法論に着目したGlobal Costume: Connecting Global History and Global History of Artを開催する。 3.「非ヨーロッパ発信」では、2017年の9月半ばより共同研究者プレストホールド氏が来日し、国内共同研究者らとともに定期的に研究会を推進し、大阪・神戸・福山で資料調査とヒアリングを行う。それらの成果を発表するため、10/14-15に立命館大学において、デザインの伝播に注目した国際シンポジウムBatik, Yuzen, African Prints (仮題)を開催し、その後世界的な貿易組織と企業に注目したシンポジウムを遂行する予定である。
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