2016 Fiscal Year Research-status Report
北イスラエル王国時代末期の実証的歴史研究(国際共同研究強化)
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15KK0061
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
長谷川 修一 立教大学, 文学部, 准教授 (70624609)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | 北イスラエル王国 / アッシリア / 旧約聖書 / 列王記 / 考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、ミュンヘン大学歴史ゼミナールのKaren Radner教授と共同研究を行った。Radner氏は本研究者同様、文献史学と考古学との総合による実証的歴史研究に長年従事して来られた国際的にも第一線で活躍する研究者であり、Humboldt Professorshipを受け、莫大な予算を背景に、西アジア、北アフリカ、エーゲ海世界、そして南アジアにまたがる紀元前1千年紀の古代史研究を架橋するような重要な研究に取り組んでいる。本研究者が対象とする紀元前8世紀の北イスラエル王国時代末期の歴史研究を、古代史の大きな枠組みの中に位置づけるのに、非常に有益な研究期間であった。1年間、ミュンヘン大学で客員研究員として研究に従事し、その間、Radner氏とそのスタッフとの間で、定期的に研究テーマに関する討議と研究を行った。 研究成果の一部を、7月にソウルで開催されたSociety of Biblical Literature International Meeting、9月にステレンボッシュで開催されたInternational Organization for the Study of the Old Testamentにおいて発表したが、Thomas Roemer、Steven McKenzie、Christoph Levinなど、この分野において牽引的な役割を果たす研究者から非常に高評価を得ることができ、研究成果の早期出版も促された。 また、これをきっかけに杭州、上海、マインツ、パリなど、様々な場所での講演の招待を受け、研究成果を広く世界の人々に発信することができた。 平成29年3月には3日間にわたり、ミュンヘンにおいて「The Last Days of the Northern Kingdom」と題する国際学会を開催した。同テーマを研究する18名の研究者に世界中から来ていただき、聖書学、アッシリア学、考古学など多面的に同時代の歴史再構成についての研究発表と討議を行った。この研究はすでに高い評価を得、ドイツのDe Gruyterという出版社から出版が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が目指した、西アジアの古代史の中に北イスラエル王国時代末期を位置づけるという目的は、1年間のミュンヘンにおける研究によって十分な成果を得ることができた。これまで、北イスラエル王国時代末期は主としてアッシリアの影響力に北イスラエル王国が翻弄されているという定説が有力であったが、研究を深める中、エジプトの影響も無視できないこと、また当時の北イスラエル王国はエーゲ海世界とも交易を行っていたことなど、従来看過されてきた重要な点が浮かび上がってきた。 本研究では、考古学と文献史学との総合、とりわけ、あまり取り組む研究者がいない『旧約聖書』の古い本文の再構成をも行う、という手法を用いる。幾つかの国際学会に参加して他の研究者と交流を深めていくうえで、その歴史再構成の手法としての価値が高く評価され、本研究の手法や成果に多くの注目が集まった。その結果、多くの大学で講演を依頼されることになり、結果として研究手法やその成果について広く国際的に発信することができた。また、本研究の目的のひとつであった国際的ネットワークの構築についても、多くの国際学会に参加し、研究発表や討議、また公開講演会の開催を通して十分に果たすことができた。さらに、南アフリカの研究者や中国の研究者、ブルガリアの研究者などから、新たな共同研究の可能性を提案されるなど、当初は予想もしていなかった方向に研究の成果が及んでおり、この点では当初の計画以上に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成28年度の研究成果の取りまとめを行う。具体的には、平成29年3月にミュンヘンで開催した国際会議の英文での出版を軸に、他の研究成果も和文・欧文でまとめて国内外の学術雑誌に投稿する。 同時に研究成果を平成29年8月にベルリンで開催されるSociety of Biblical Literature International Meetingで発表し、討議を通して研究を深化する。 また、秋期に海外の研究者を呼んで講演会を開催する。本研究者も、公開講演会やカルチャーセンター、一般向けの雑誌等、様々な媒体を用いて研究成果を広く国民に発信する。
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Research Products
(17 results)