2016 Fiscal Year Research-status Report
中世アルプス山間都市と周辺地域の政治社会(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0065
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
佐藤 公美 甲南大学, 文学部, 准教授 (80644278)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | 西洋史 / アルプス史 / ティロル南部 / 公証人文書 / 公証人 / 法文化 / メラーノ/メラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中世ティロル南部のゲルマン法文化とローマ法文化の相互補完的共存と混淆による政治文化を明らかにするために、15世紀の未刊行公証人登記簿を中心的な分析対象とし、現地文書館の他類型の史料と併せて検討するために、イタリアでの滞在研究を計画している。平成28年度は年度末に交付申請を行い、翌平成29年度末に予定している渡航の準備と渡航先での研究開始準備に焦点を合わせて研究計画を遂行した。 渡航中には、メラーノ市立古文書館で15世紀後半の公証人登記簿を中心的に検討する予定である。そのため、これについてこれまでの準備研究の過程で部分的に撮影した史料の一部を継続的に分析し、基研究の発展と本研究計画を接続する作業を進めた。これによって、15世紀には既存の公証人登記簿に含まれる内容を基にした謄本の作成が増大し、本研究課題の主な分析対象となる一連の登記簿を作成した公証人が多くの謄本を作成していたことが明らかになった。15世紀の謄本の中には、謄本がラテン語の原本からドイツ語への翻訳を伴っていたことや、法廷に提出されたことなどが確認される事例も確認された。本研究計画の基研究では、15世紀中葉に裁判帳簿の形式が整備されそれまでの公証人文書の役割の一端を担うようになったことを明らかにしたが、それにも関わらず存続し続けた公証人文書の意義が新たな検討課題として残されていた。これについて今年度の研究からは、翻訳による証拠文書の作成というティロル南部独特の業務をこの地域の公証人が果たしており、その意義が新たな文書制度とその文化の中で再定義された可能性が浮上した。 また、渡航先の研究協力者と面会し、研究計画内容と渡航予定についての打ち合わせを行い準備を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航先との調整は順調に進展しており、準備的な史料調査と分析も一定の成果を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、引き続き渡航準備と渡航後の速やかな研究遂行のための基礎作業を行う。年度内に一度渡航し、メラーノ市立古文書館で、関連する他類型史料の所蔵調査を行い、渡航後の計画を立てる。並行して、撮影済み史料の分析を継続し、現地での研究の見通しを立てる。また同時にアルト・アディジェ州(イタリア)と周辺の文献調査を継続する。平成29年度は研究遂行上の課題として、渡航準備および校務との兼ね合いから時間の効率的利用が挙げられる。対応策として、速やかな現地研究の開始を第一の目的として課題を整理し、集中して作業を進める時期を選択し年度内計画を進める。 渡航後はメラーノ市立古文書館を中心に、ボルツァーノ県立古文書館、インスブルック州立古文書館などの古文書館や図書館で史料調査を進め、随時研究協力者の助言を受けて研究を進める。また国際的ネットワーキングを進め、現地で研究集会を開催する予定である。 また、滞在期間中に一時帰国を行い、アルプス史研究会等での研究報告を行い、日本の研究者の専門的意見を仰ぐとともに、イタリア現地で行う研究集会についての情報共有を行う。そしてイタリアでの活動を日本の国際的研究に接続するため、日本の研究者との研究ネットワーク構築と、シンポジウム開催等の方法による日本での研究成果の還元を行う。
|