2017 Fiscal Year Research-status Report
中世アルプス山間都市と周辺地域の政治社会(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0065
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
佐藤 公美 甲南大学, 文学部, 教授 (80644278)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 西洋史 / アルプス史 / ティロル南部 / 公証人文書 / 公証人 / 法文化 / メラーノ/メラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、年度内に予定されていた渡航の準備と、渡航後の研究開始のための準備に焦点を当てた活動を行った。 本研究は、中世ティロル南部のローマ法・ゲルマン法文化の共存と混淆の様相を明らかにするため、同地域の公証人文書という形態の衰退に向かう15世紀後半という時期に対象を設定し、その最終局面における実態の検討を行う。そのため都市メラーノで活動した公証人レオンハルト・フェントの遺した公証人登記簿を中心的な分析対象とする。そして公証人の活動の実態と都市における存在の様態を明らかにするために、都市メラーノの行政文書と公証人登記簿をクロスさせた調査を現地文書館で行うことを計画している。 そのため、2017年度は夏季に一度渡航し、メラーノ市立古文書館で滞在研究準備のための史料調査を行った。今年度の調査では、フェントの公証人としての活動期間と重複する時期の行政文書の所蔵状況を確認し、旅程の許す時間の中で可能な限り目を通し、写真撮影を行った。その結果、同公証人の市長としての活動と、都市メラーノでの役職と活動がいくつか確認され、一定の参照点が得られた。 また、2016年度末に現地メラーノ市で行われた中世都市メラーノに関する学会「1317年―都市とその法。中世におけるメラーノ」の成果と報告集出版についての情報を収集し、関連する研究者とのコンタクトを取り、研究交流の準備を進めた。 渡航準備のためには、共同研究者のマルコ・ベッラバルバ氏およびハンネス・オーベルマイア氏とのメールや電話での打ち合わせと調整を継続的に行い、3月27日に渡航を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度末の渡航と、渡航後の現地での文書研究のための準備は支障なく進められ、現地での研究の見透しを立てることができたため、おおむね順調に進展していると言える。 また、基課題と本研究計画を接続する学術論文2本を2017年度中にイタリア語で公表することができたため、よりスムーズは研究協力のための基盤を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航後の2018年度前半は、古文書館での一次史料の読み込みと写真撮影を継続的に進め、着実な実証研究を中心に遂行したい。史料の読み込みについては、共同研究者による技術的助言とチェック、及び解釈についての継続的な議論を緊密に行いつつ進める計画であり、この点については既に十分な打ち合わせを行っている。また、関連分野の専門家との交流と意見交換を随時進め、共同研究者と協力し研究交流のためのネットワーキングを進める。その成果をもとに、2018年度内にイタリアでの学術セミナーまたはラウンドテーブルを開催する予定である。 一方、当初の研究計画では、渡航期間中に途中成果を日本の専門家、特に若手研究者を交えた研究会で議論・共有する予定であり、これをもとに日欧研究交流ネットワークの形成につなげる計画であった。しかし渡航後、イタリアでの滞在許可証取得のための手続きに長期間を要すことが判り、その間の一時帰国に困難があるためこの計画は変更せざるを得ないこととなった。この手続きに最終的に必要な時間について、現時点では確実な見透しが得られないため、年度内に代替計画の実現を考えるには不確定要素が多い。そのため研究実施期間の延長の申請を行い、2019年度前半に共同研究者を日本に招聘しての研究集会の開催によって目的の達成につなげることを考えている。
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