2017 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮における古代道路の歴史地理学的復原に関する基礎的研究(国際共同研究強化)
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15KK0066
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
轟 博志 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (80435172)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 歴史地理学 / 古代道路 / 復原 / 新羅 / 九州五小京 / 三国時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、30年度の本格的な渡航調査に備え、予備的な渡航を実施した。特に主たる連携研究機関となる韓国学中央研究院には、夏季休暇と冬期休暇の二回において長期滞在し、共同研究者である丁致栄教授と、連携方策について協議を重ねた。その結果、30年度の世界韓国学大会で、本研究に関連するセッションを設けることと、巡検等の調査研究の機会を設けること、さらに院生と本研究に関して共同研究や特講を行うこと、その中から研究補助員を採用すること、などを確定した。特に研究代表者はGIS方面が強くないので、古道のルートなどの図化をできる人材を求めることとした。 もう一つの連携研究機関である古道博物館にも赴き、呂館長と会談を行い、30年度後半に、本課題の中心事業である、博物館での国際シンポジウムを行うことを確認した。 また、高句麗の交通体系についての調査を行うため、王都のあった中国吉林省の集安に出張をし、博物館と関連遺跡の調査を行った。王城(国内城)の配置や逃避型の山城(丸都山城)との位置関係、王陵との位置関係は、平壌城や百済慰礼城との相似性があることを確認できた。 11月には日本において最初の国際シンポジウムを、本学の年例カンファレンスのパネルとして実施し、日本と韓国から研究者を招いて、古代道路研究の研究動向について、会議を行い、今後の研究に向けての論点整理を行った。 年末には、雑誌『海路』において、本研究の中心課題である「新羅5通の復原」に関する、仮説を提示する論文を掲載した。今後の研究は、これを立証することが主となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
役職の関係上海外渡航が30年度にずれ込んだものの、先行研究整理やネットワークの構築等の準備作業はほぼ順調に終了した、そのため、研究計画は無理なく予定通りの三年間で終了するものと予測する。 唯一予定通り進展していないのは、中国の研究者との連携である。今まで、研究代表者の大学院以来のネットワークを活用して、日韓の研究ネットワーク構築は、史学や考古学も含め、ほぼ予定通りに進展している。一方で、中国に関しては、申請段階で予定していた中国側研究者個人の事情もあり、新たに探さなければならない状況にある。 考古学や史学との連携については、新たに連携研究機関にソウル大学校アジア研究所を加えたことにより、ネットワークが開拓できた。ここは韓国における地域研究のメッカであり、地域別に学際研究活動を活発に行っていることが奏功した。たまたま当該研究所ではシルクロードの地理学的復原という、本研究と極めて親和性の高い研究を、それも地理学と考古学、史学との連携という立場から行ってきたので、ネットワークの構築に有利となった。これは当初考えてもいなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿うことを第一義としつつ、今後は以下のように推進する。 ①中国での研究協力者を確保することを目指す。現在中国語の習得にも努めており、中国系の英語系でない学会にも参加する計画である。また国際学会にも積極的に参加する。さらに、ハブである古道博物館にも、研究協力者の仲介を依頼している状態である。 ②現在韓国に滞在中であり、そのアドバンテージを生かして、研究活動を進める。資料収集や分析はかなり進んでいるので、それをまず完遂させ、積極的に現場に赴いて、資料収集を補完する。また、当初予定した研究協力者のみならず、各地に散在する文化財研究所等との人材交流を積極的に進める。 ③研究成果のアウトプットを積極的に推進する。6月の大韓地理学会、9月にカナダのモントリオールで行われる交通史学会(T2M)、世界韓国学大会、12月の第16回アジア太平洋カンファレンス等で発表を行う。また2019年1月を目標に、古道博物館を借りて、仕上げの国際会議を行う。 ④③を受ける形で、論文の発表や投稿を順次進めてゆく。
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