2018 Fiscal Year Research-status Report
夏目漱石によるイギリス受容―小説理論の構築の一環として(国際共同研究強化)
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15KK0067
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
野網 摩利子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (60586668)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | 世界文学 / 日本近代文学 / 夏目漱石 / オシアン / ワーズワース / 浄瑠璃 / ウィリアム・ジェイムズ / アンリ・ベルクソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究はこれまで2度にわたる国際シンポジウムを、オックスフォード大学ならびに国文学研究資料館で開催してきた。その内容を活字にまとめる成果を挙げた年度として位置付けられる。 ①『世界文学と日本近代文学』という題で公刊する、本共同研究の大きな成果物を編集し終えた。著者は、野網摩利子、ダリン・テネフ、マイケル・ボーダッシュ、スティーブン・ドッド、小森陽一、リンダ・フローレス、谷川惠一の7名で、論文数は12本である。私は2本の論文「古謡と語り―漱石の翻訳詩から小説へ」「文学の生命線―『リリカル・バラッズ』から漱石へ」、および、「はじめに」「あとがき」によって、この文学研究構想を示した。従来の日本近代文学研究の視野には入ってなかった領域まで研究の触肢を伸ばすことのできた論文集である。 同じ観点から、日本古典への視野拡大も行った。日本近代文学は明治期から地続きであった江戸期の芸能、また、それ以前から伝承されてきた文学を、近代作家が小説等に取り込んでいることに気づかないまま、研究がなされてきた現状があるのに対し、つぎの2点の成果を挙げることができた。 ②「古譚と『草枕』」(『日本近代文学』98号)、③韓国の高麗大学校における国際フォーラム発表「漱石文学に生きる伝承」。 さらに、漱石がウィリアム・ジェイムズやアンリ・ベルクソンを先取りするような思想を抱いていたからこそ、彼らの思想に反応したのだと示し、文学が世界の代表的思想に匹敵することを示した論文を公表しえた。④「思想との交信ー漱石文学のありか」【上】【下】(『書物學』12・13号)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
つぎの4点による。(1)本共同研究の代表的成果である『世界文学と日本近代文学』全原稿を早々と仕上げ、研究成果公開促進費応募にまで持ってゆくことができた。(2)本研究は近代を超える研究を目指しており、その意味で、日本に文化をもたらしてきた韓国で、この年度の主要な研究成果を発表することができた。(3)同様に、従来の漱石観になかった、漱石小説における浄瑠璃/歌舞伎の利用を示す論文を公表できた。(4)漱石による欧米思想の先取り、あるいは、応用を示す論文を連載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
『世界文学と日本近代文学』が研究成果公開促進費を得たことで、公刊まで努めると同時に、その英語版の準備に着手している。タイトルは"From World Literature to Japanese Modern Literature"となる予定である。英語圏の論理構造に載るように書き換えなければ、厳しい学術書の審査を突破できない。真に新しい文学研究であることを世界に認知してもらえるよう、本共同研究の理論および論文集全体の練り直しを行う。
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Research Products
(5 results)