2016 Fiscal Year Research-status Report
ジェームズ・ステュアートの貨幣的経済理論成立過程の研究(国際共同研究強化)
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15KK0073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古谷 豊 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (00374885)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 経済学史 / 経済思想史 / 貨幣的経済理論 / ステュアート / カンティロン / 経済学説 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究課題については、2016年度は、本格的な研究の前段階の、準備をする段階にあたる。2016年度末から約一年間、海外渡航をしてこの研究課題(「ジェームズ・ステュアートの貨幣的経済理論成立過程の研究(国際共同研究強化)」)を進めるという計画だが、そこで研究の実を挙げるための、様々な下準備を今年度、進めていった。 そのなかでも研究にとって重要だった点は、第一に、海外で研究する際の環境について、当初予定したよりも遥かに優れた環境を知らされ確保することができた点である。当初は英国を拠点にしつつ、アメリカ(デューク大学)にも短期訪問して研究を進める予定であったが、本年度の早い段階で一度デューク大学を訪れる機会があり、多くの研究者の声を聞いたり現地の様子を見たりなどして、デューク大学の経済学史研究センターを私の研究拠点にすることが、当該研究課題を進めるうえで最善であることが分かった。幸いそのための調整も、多くの方のご助力をいただきながら、手際よく進めることができた。 第二に重要であった点は、共同研究者の一人を招いて国際カンファレンスを開いた点である。カンファレンスの主題は、当該研究課題の歴史的背景(18世紀のイングランド及びスコットランドにおいて、貨幣的経済理論などが議論される際の、文化的・宗教的背景)にあたる。研究の準備段階で、共同研究者と研究交流しつつ、背景についての洞察を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの方のご助力により、海外でのよい研究環境を確保できたことが大きい。 この分野で海外にて共同研究を進めていく際には、例えばグループで実験を進めるような分野ではないが故の、いくつかの考慮すべき事項があることが分かった。一つは、日本から海外の共同研究者のところに赴いても、共同研究者は学期中は教育・管理運営業務が大きいため、同じようなペースで何かを進めるというわけにはいかないこと。もう一つには、海外研究者との共同研究とは、短期的にはともかく、長期的には、周辺への人的ネットワークを広げ、研究文化の違いを理解し、信頼関係を醸成していくといった、一見迂遠な基礎的諸要因が重要だということ。 これらの点を考慮に入れると、海外に長期滞在して研究を進めるうえでは、滞在先としてはなるべく、当該研究分野で頻繁にワークショップを開いているというような環境であることが望ましい。幸い、私の共同研究者の一人は、私の研究分野で世界的にも数少ない研究センターに所属しており、そこを私の海外での研究拠点とすることができたことで、毎日多様な研究交流を持ちながら研究を進めることができる。 なお、研究課題の採択通知受領後、なるべく先手を打って海外渡航の準備を進めていったつもりだったが、それでもかなり時間がかかり、ようやくスケジュールに間に合った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、第一段階(2017年10月頃までをめど)では第一にジェームズ・ステュアートの貨幣的経済理論についての草稿資料の整理と、第二にカンティロン『商業試論』についてのリチャード・ヴァンデンベルクの草稿研究成果の精査、また第三に国際カンファレンスやワークショップなどでの議論、これらを並行して進めていって、接合点とそれへの意義の大きいアプローチを探る。第二段階でそれを掘り下げていき、なるべく2018年の経済学史学会およびThe History of Economic Thoughts Society Conferenceで報告できるよう仕上げていく。
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