2016 Fiscal Year Research-status Report
自動的な対人認知の発達に関する比較文化モデルの構築-日米の違いの検討ー(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0075
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 由紀 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30377006)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 特性推論 / 社会的評価 / 文化 / 社会化 / 母子相互作用 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,他者のパーソナリティ特性(やさしい,意地悪,etc)を推論する能力の発達を,比較文化的アプローチにより検討することである。文化差が現れる前後の乳幼児と親を対象とし,文化に固有の推論形態がいつからどのように現れるのか,また親子の相互作用がどのようにその発達に影響を及ぼすのかについて,明かにする。 1年目の2016年度は,日本とアメリカそれぞれにおいて,生後6カ月,9カ月,12カ月,15~18か月の乳幼児とその母親,計159組を対象に,個別に実験を行った。乳児にパペットが社会的相互作用を行っている場面のビデオを提示し,注視行動および選好を調べた。その結果,日米いずれにおいても,反社会的行動を示した他者に対し,向社会的行動を示した他者よりも,敏感に反応すること,また向社会的行動を示した他者への選好は,15~18か月から現れること,またこれらの発達過程において日米の差が見られないことなどが示唆された。さらには,母親が他者の社会的行動について子どもに語る際の特性語や評価的な単語の使用には日米の差があること(アメリカ>日本),またこれらの単語を多く使用する母親の子どもは,より特性推論能力を早期から示しやすいことも示唆された。 これらの結果は,先行研究においてほとんど検討されてこなかった,発達初期,特に前言語期の子どもの特性推論の発達が異なる文化で普遍的に見られること,またその発達には社会化の影響が見られることを初めて示したものである。 結果は国際学会のシンポジウムにおいて発表し,また国際雑誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究先において,実験室を整備し,またIRBの認可も得て,アメリカ人参加者を対象と下実験を実施することが出来た。 また日本に一時帰国した際に,日本人を対象とした実験も遂行できた。 1年目として,まずは乳児期の子どもを対象とした実験を,日米それぞれで完了し,予定していた参加者数のデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3~4歳の子どもを対象とした実験を行う。他者の向社会的行動および反社会的行動のアニメーションビデオを提示し,行為者の特性を推論してもらう。言語報告などのexplicitな指標と,注視行動などのimplicitな指標を組み合わせる。行為者の要因と,行為の生起した状況要因のいずれにより注意を向けやすいか,またいずれの要因を特性推論の際に考慮に入れやすいかなどにおいて文化差が見られるかどうかを検討する。
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