2017 Fiscal Year Research-status Report
法人税と企業行動の準実験:明治期と21世紀の企業組織形態の分析(国際共同研究強化)
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15KK0088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
恩地 一樹 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (80709858)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 税制 / 租税回避 / 組織再編 / 納税者行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究活動の一環として国際学術会議をカリフォルニア大学サンディエゴ校において共催したことが2017年度の主要な成果である.会議のテーマはあえて特化した内容に設定したため,経済学における通常の学術会議よりも専門性が高くなった.具体的には最近着目されているバンチング推計法についてである.例えば,政策策定者が所得税率を検討する際,納税者の行動の歪みを考慮するべきであるが,バンチング推計法は納税者行動の予想に資する.基調講演者に考案者のEmmanuel Saez(Berkeley)と発展を主導したHenrik Kleven(Princeton)を招待し,報告者は世界的に公募した.会議プログラムはインターネットで公表しているが,第一線といえる質の高い研究を選別しえた.財政学における先端的な応用研究と計量経済学における基礎研究の織り成す独特のプログラムといえる.討論者は議論を活発にすべく注意深く選定した.参加人数は56人と当初見込みより多かった. 財政学者と計量経済学者が膝を突き合わせる場は学術的議論の進展に有効であったといえる.計量経済学の権威のWhitney Newey(MIT)は従来の推計法を辛辣に批判し,その論文をSaezが討論したが,当該セッションはSNSなどインターネットで話題となったが,非常に刺激的なものであったといえる.その後のセッションの計量経済学者による冷静な報告は財政学者側の理解を深める契機となり,最終日のKlevenの基調講演はNewey批判を考察しその限界を明らかにした.インターネットで公開した資料は内外の大学院生にも好評であり,この分野における世界的な研究活動に貢献する学術会議を開催できたといえる. 私自身バンチング推計法の応用論文を報告し,最近の推計手法への理解を深める機会となったとともに,貴重なフィードバックをえることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目的は,渡航先大学において国際学術会議を開催することであった.参加希望者が当初予定よりも多くなり広い会議室を確保する必要がでるなど最終調整に手間どうこともあったが,渡航先と本務校のスタッフの尽力もあり無事開催することができた. 国際共同研究は予定通り進展している.税と合併行動についてのサブプロジェクトをミシガン大とオーストラリア国立大でセミナー報告ならびに国際学会で2回報告した.また,一般向けのダイジェストを日本語で公表した.当該論文は国際ジャーナルに投稿中である. 組織改編について経済史からアプローチしたサブ・プロジェクトは国際ジャーナルで公表され,今後も発展が見込まれる.
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Strategy for Future Research Activity |
渡航先大学であるカリフォニア大学サンディエゴ校で共著者と定期的に打合せを行い,合併行動の分析を継続する.税と組織再編について経済史からアプローチした国際共同研究に発展が見込まれるため,オーストラリア国立大学にも渡航し打合せを行い研究の進展を図る.このため,来年度は,米国と豪州の機関に渡航し論文を発展させる.
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Research Products
(9 results)