2017 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアとフィリピンの都市化、中高等教育拡充と世帯間消費支出格差の分析(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0096
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮田 幸子 立命館大学, 経営学部, 准教授 (10646764)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | education policy impact / labor outcomes / overeducation / skill mismatch / rural welfare / transportation project / 教育過剰とスキルミスマッチ / 都市アクセスと農村所得 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究課題うちの二つ、労働市場における仕事と高等教育のレベルや専門分野のマッチング、及びインフラ拡充下における農村の経済状況や家計の所得状況への影響、についての研究を開始した。 一つ目は、高等教育のレベルや専門分野と、労働市場における仕事とのミスマッチ(教育過剰など)について、先行研究のレビューを行った。先行研究のほとんどが欧米諸国に蓄積が長く、最近ではパネルデータを用いたより詳細な情報に基づく研究が行われている。データについては、インドネシアのいくつかの大学において、卒業生を対象に就職状況追跡調査を実施しており、マッチングに関連した情報が存在するため、共同研究者らとの議論からデータの候補とした。それらの調査データを、現地の協力研究者らと取得可能かについて検討に入った。大学によっては、サンプル数が少ない、あるいは不定期な調査のため、大学を絞って協力の依頼を始めた。 二つ目は、インフラ(特に道路網)の拡充・発展に伴い、農村地域の家計の経済状況(賃金)や都市から離れた地域に住む個人・家計の経済状況にどのような影響があるのか、先行研究のレビューを行った。先行研究において、インフラの農村社会経済への影響についての研究は、経済学分野のみならず地域科学、都市経済や農業経済分野等にも蓄積が多くあることが分かった。概ね農業生産性や貧困削減に貢献したとする研究が見られる一方で、農家の賃金や所得に必ずしもプラスの影響が見られるわけではないという結果も見られ、一致した見解でないことを確認した。またインドネシアにおけるインフラ関連、特に道路網の発展の経緯についての資料及びデータを収集し始めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的は、先行研究の整理と最新の現地情報を入手し、分析に必要な情報、データの整備を行うことであり、概ね目的は達成された。 1. 高等教育と仕事のミスマッチについて新たな調査データの存在を確認した。関連する先行研究からこの分野でインドネシアでほとんど実施されていない実証研究に着手する準備を始めた。 2. 本研究の基幹研究であるインドネシアの教育の収益率の実証研究について、その拡張を行い教育政策の効果を考慮した再分析を行い、セミナーなどで発表した。 3. インフラ関連の情報収集、道路網発展の経緯に関する現地レポートや国際機関の出版するレポートなどを入手した。農業経済分野において、いくつか関連する実証研究について先行研究のレビューを行った。インフラ拡充に伴う農村地域の経済への影響についての先行研究レビューを行った。そのレビューから、最近の状況について家計調査データを用いて分析可能かどうかの検討に入った。 以上の中から、実現性が高いものから着手し始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、今後は以下のように計画している。初年度において調べた内容から研究計画に若干項目を追加した。また、基盤C研究からの拡張であることを考慮して、その成果に関連する研究を同時に取り扱う。 1. 高等教育と仕事のミスマッチについて、インドネシアの大学における独自の調査データの申請を現地の協力研究者らと行う。入手可能なデータを用いて分析を開始する。基本的な分析結果をまとめ、内外のセミナーや学会にて公表する。 2. 高等教育の政策影響の分析結果を公表した際のコメントをもとに、分析を進め、論文にまとめる。 3. インフラ拡充に伴う農村地域への影響(都市との格差、労働賃金あるいは所得など)について、最新のインドネシアの家計調査データ(IFLS等)を用いて、分析に着手する。
|