2018 Fiscal Year Research-status Report
生態系と経済システムの非線型ダイナミクスを捉えた政策モデリング手法の確立と適用(国際共同研究強化)
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15KK0104
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上原 拓郎 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (60384757)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | システムダイナミクス / 産業連関表 / セーヌ河口域 / 生態経済モデル / 生態経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで,フランス・セーヌ河口域の生態経済をシステムダイナミックス(SD)と産業連関表(IO)を接続したIO/SDモデルを構築し,河口域の生態系回復策が生態経済に与えるダイナミクスを検討してきた. 2018年度は,1)モデルの更なる動学化,及び2)生態系回復策にかかる費用が生態経済に与える影響について検討を行った.1)モデルの更なる動学化については,IOの動学化を実施した.これまでのIO/SDモデルでは,IOの技術係数は一定と仮定していた.現実には,産業構造は技術革新等により変化するため,その動学化が課題であった.そこで,時系列のIOを基に技術係数を動学化し,IO/SDモデルに組み入れた.2)生態系回復策にかかる費用が生態系に与える影響については,共同研究者Cordierが考案した,産業類型別の費用負担原則(Cordier et al., 2018)を適用し,本モデルのIO部分に反映させることで検討を行った. 上記の精緻化したIO/SDモデルを使い,採用する費用負担原則による生態経済システムへの影響を明らかにした.また,モデルの感度分析を行ったところ,生態系の回復を最大化するよりも,水質を改善したほうが,当該生態系に生息するヒラメのストック量向上に効果的であることが明らかとなった.そこで,水質をどのように取り扱うかが今後の検討課題として明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたセーヌ河口域の生態経済システムのモデル・シミュレーションの結果,当初,予想しなかった新たな研究課題と研究の方向性が明らかとなったため.
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り,水質の取り扱い方が重要であることが明らかとなった.セーヌ川の水質は,河口域周辺経済だけの影響ではなく,上流,主にパリや河口域に至るまでのセーヌ川流域での農業や畜産の影響が大きいと考えられる.したがって,これまでのセーヌ河口域を対象とした生態経済モデルから拡張し,パリ等を含めたモデルを構築する必要がある. 今後の研究の推進方策として,パリを含む,広域の経済活動が水質に与える影響をとりまとめ,モデルに反映させることで,水質を改善させるための費用負担原則やその広域生態経済システムへの影響を検討する.
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