2016 Fiscal Year Research-status Report
有期契約社員の正社員化と限定正社員の処遇および雇用システムの変容に関する実証研究(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0112
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西野 史子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40386652)
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Project Period (FY) |
2015 – 2017
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Keywords | 雇用システム / 非正規雇用 / 国際比較 / 女性雇用 / 若者雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における非正規雇用の増大を含めた雇用システムの変容について、国際比較の視点から明らかにすることである。第一の研究課題は若年非正規雇用に関する日米比較を行うことであり、第二の研究課題は、ハイテク企業における正規雇用・非正規雇用エンジニアの人事管理の日米比較を行うことである。 平成28(2016)年の3月28日に米国ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所に渡航し、平成28(2016)年度も引き続き米国に滞在し、2017年3月31日に日本に帰国するまで研究に従事した。ライシャワー研究所ではゴードン教授と意見交換を行ない、研究集会を企画実施し研究報告を行ったほか、学会発表を行いながら研究を推進した。さらにアメリカにおける新しい雇用形態について、ハーバードおよびMITのセミナー等へ出席して知見を広げたほか、現地ボストンおよびシリコンバレーで若年者のインターンシップやハイテク企業へのインタビュー調査も行った。 その結果、以下のことがわかった。第一に、日本の正規雇用の雇用慣行の特殊性から、日本における正規雇用とその対比としての非正規雇用の格差が顕著である。第二に、日本の非正規雇用政策は2010年頃に大きな転換点があり急激に拡充していった。しかしその方向性は、欧州などに見られる横断的労働市場の形成というよりは、日本的な内部労働市場にどのように包含するかという方向性である。第三に、少子高齢化による労働力不足が深刻化しており非正規雇用をめぐる雇用環境が急速に変化している。第四に、アメリカには非正規雇用という概念がないため、日米比較を行うためには「産業集積と地域労働市場」という新たなフレームワークを立て、地域の多様な雇用や人事管理について研究していく必要がある。 これらの成果は、日本の非正規雇用と正規雇用の関係を国際的な視点で特徴を捉えた点で、意義のある成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハーバード大学ライシャワー研究所を拠点とし、ハーバード大学ケネディスクール、ビジネススクール、MITの雇用関係研究所などのセミナーに定期的に参加するとともに、各国からの研究者ともネットワークを構築することができた。またライシャワー研究所にて研究発表会の企画・開催および発表、アジアを対象とする学会(Association of Asian Studies)での発表、理系を中心とするボストン日本人研究者交流会での講演によって、多様なバックグラウンドの研究者と意見交換をするとともにネットワークの構築も行った。 また、現地の調査についても、ボストンエリアのおよびシリコンバレーにて、インターンシップならびに産業集積と地域労働市場に関する調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2016年度に行った研究に関する成果の公開を行っていく予定である。 まず「日本における非正規雇用の政策と労働市場」に関して、2016年度の研究発表でのコメントやディスカションを踏まえ、研究論文を執筆しており、今後投稿する予定である。その際に追加調査も必要であれば行う。 また「産業集積と地域労働市場の日米比較」について2016年度に行ったボストン・シリコンバレー調査の部分は、関連先行研究のサーベイをあらためて行い、フレームワークを定めた後に、研究論文として公開する予定である。その後に、日本における調査を集中的に行い、日米比較として研究成果をまとめる予定である。日本社会学会等の学会でも報告を行う。 「インターンシップに関する調査」についても先行研究サーベイをあらためて行った後に、研究論文として公開する予定である。
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