2017 Fiscal Year Research-status Report
有期契約社員の正社員化と限定正社員の処遇および雇用システムの変容に関する実証研究(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0112
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西野 史子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40386652)
|
Project Period (FY) |
2015 – 2018
|
Keywords | 非正規雇用 / エンジニア / イノベーション・エコシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における非正規雇用の増大を含めた雇用システムの変容について、国際比較の視点から明らかにすることである。第一の研究課題は若年非正規雇用に関する日米比較を行うことであり、第二の研究課題は、ハイテク企業における正規雇用・非正規雇用エンジニアの人事管理の日米比較を行うことである。平成28(2016)年度に、米国ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所に滞在し研究を推進し、平成29(2017)年度は、それらの成果を踏まえ、日本において下記の研究を行った。 第一に、ハーバード大学アンドルー・ゴードン教授との共同研究である、日本の非正規雇用政策について引き続き研究を行った。具体的には以下の事が明らかとなった。日本の非正規雇用政策は2010年頃に大きな転換点があり、その後急激に拡充していった。しかしその方向性は、欧州などに見られる横断的労働市場の形成というよりは、日本的な内部労働市場にどのように包含するかという方向性であるところが非常に特異である。少子高齢化による労働力不足もあり、正社員化、限定正社員制度の活用が活発となっている。また政府による同一労働同一賃金の方針の影響もあり、正規・非正規で福利厚生や待遇を揃える事例がいくつか見られるようになった。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムと地域労働市場に関する研究を推進し、日米の統計資料調査および平成28(2016)年に実施した米国実態調査のデータを整理・分析し、研究会にて報告を行った。 第三に、エンジニアの日米比較として平成28(2016)年に開始したシンガポールデザイン工科大学のNilanjan Raghunath准教授との共同研究を推進し、「日米における科学技術教育とジェンダー」に関する論文を投稿し、米国のカーネギーメロン大学発行の学術雑誌 The Heinz Journalに掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、日本の非正規雇用政策の研究については、新しい研究が活発に発表されており、政策の変化も著しいことから、資料を読み込むための時間が必要となっている。しかしながら、研究の方向性は見えているため、引き続き研究を続行し論文として完成させいく予定である。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムについては、東京で行える調査(文献調査および東京の調査)に関しては順調に進める事ができた。米国の追加調査を2018年度に予定しているが、概ね順調に進展している。 第三に、「日米における科学技術教育とジェンダー」に関する論文は、Nilanjan准教授の迅速な推進により、論文投稿から年度内に雑誌掲載まで完遂する事ができ、非常に順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30(2018)年度においては、平成29(2017)年度までに行った文献研究、資料研究、実態調査、研究報告でのコメントを踏まえ、学会報告ないし論文発表を行う予定である。 第一に、日本の非正規雇用政策についての研究については、政策文書の整理などを進めた上で、日本語での論文発表を行う予定である。また、当該テーマにつき、関連文献の書評を依頼されているため執筆する。その上で、Nilanjan准教授とともに日米非正規雇用の比較として共同論文を執筆し、米国の学術雑誌に投稿する予定である。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムについては、2017年度に行った研究報告の内容に、2018年に予定している米国でのフォローアップ調査の内容を追加し、ワーキングペーパーとして公表する予定である。
|