2017 Fiscal Year Research-status Report
精神の障害が一定の影響を及ぼした事案における量刑判断等のあり方に関する学際的研究(国際共同研究強化)
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15KK0119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 拓人 京都大学, 法学研究科, 教授 (10293333)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 精神の障害 / 量刑 / 責任能力 / ドイツ刑法 / オーストリア刑法 / スイス刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、年度末に(次年度初めにかけて)短い期間でではあるが、当初の予定通り、ドイツ連邦共和国・フライブルク市にある、マックス・プランク外国・国際刑事法研究所において、海外渡航を実施しての研究を遂行することができた。この滞在は、いわばキックオフ滞在であり、今後の数次にわたる滞在の準備段階をなすものと位置づけ、海外共同研究者の1人(具体的にはヘルムート・クーリー教授)と今後の研究の進め方につき詳細な意見交換を行うことを中心とした。 もっとも、滞在期間においては、諸外国からの研究者があまり多くなく、当初予定していた質問票によるアンケート調査は、諸外国からの研究者が多く集まる夏休み期間に是非とも次回渡航を実施し、行う必要があることとなった。 渡航に至るまでは、渡航した際における研究の実質化を図るため、国内においても実施可能な準備的・基礎的研究を精力的に遂行した。平成29年度においては、ドイツ刑法21条のもとでの判例実務の状況を文献的に調査することに取り組み、責任能力の減少がそれ自体としては責任を減少させるとの認識が共有されつつも、責任加重的な要素が加わった場合には、いわば相殺的な扱いがなされていることが判明した。 年度末には、この点を中心として、こうした責任加重がどのような判断過程を経てなされているか、その理論的根拠は何かについても理論的考察を加え、これらの成果を論文にまとめ、法学論叢誌上に公表することができたのは、大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外渡航を実施しての調査研究を、国家的任務である司法試験考査委員(採点)を拝命したことから、夏休み期間において実施できなかったこと、春休み期間においても短い期間でしか実施できなかったことから、当初の計画どおり進捗しているとは言いがたい状況にある。 他方で、国内において準備的・基礎的研究を強力に遂行し、年度末に論文を完成させることができたのは、十分な成果であるため、(3)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、とりわけ諸外国からの研究者が多く集まる夏休み期間において、できるだけ長い期間滞在しての研究を行うことが目標となる。 もっとも、次年度においても、国家的任務である司法試験考査委員(採点)を拝命する予定であること等から、日程はかなり圧迫された状況にあり、当初の予定通り計画を達成するには、平成31年度までの期間延長も視野に入れた計画変更を行う必要があるかもしれない。
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