2016 Fiscal Year Research-status Report
EPAによる貿易・投資自由化のグローバルCGEモデル分析(国際共同研究強化)
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15KK0127
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
板倉 健 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90405217)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | CGEモデル / heterogeneous firms / GTAP / FTA / TPP / RCEP / TPP11 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界中で自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が数多く締結されてきたが、2016年の米国大統領選挙以降、保護主義台頭への懸念が強まっている。米国の環太平洋経済連携協定(TPP)締結からの撤退表明があったものの、我が国では米国抜きのTPPや、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日EU 等のEPAに向けた議論が進んでいる。FTAやEPAの経済効果を試算するため、「計算可能な一般均衡(Computable General Equilibrium: GGE)モデル」という分析ツールが利用されてきた。しかしながら、関税撤廃を中心とした貿易自由化に加えて、非関税障壁や投資分野の自由化効果を同時に分析した研究は少ない。本国際共同研究は、FTA/EPA分析の実績と経験を有し、モデル開発においても最先端にあるPurdue大学国際貿易分析センターと協力して実施する。同センターとの共同研究により、企業異質性を扱うグローバルCGEモデルや、非関税障壁や投資自由化効果を考慮したFTA/EPAの政策シミュレーションをより発展させることが研究目的である。研究実績として、次の2点を挙げることができる。(1) Purdue大学国際貿易分析センターで開発され世界中で広く利用されている比較静学のGTAPモデルを拡張して、Armington-Krugman-Melitz Encompassing Moduleという最新の国際貿易モジュールを包含したCGEモデルを開発した。(2) 同センターの協力のもと、投資と資本蓄積による逐次動学を組み込んだGTAPモデルと最新のデータベースを活用して、2011ー2035年の政策シナリオを構築し、米国抜きのTPP (TPP11)やRCEPの経済効果分析を実施した。海外直接投資と投資協定の実証モデルによる推計値を応用し、関税・非関税障壁・投資分野の自由化効果を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況として、次の2点を挙げることができる。(1) Purdue大学国際貿易分析センターで開発され世界中で広く利用されている比較静学のGTAPモデルを拡張して、Armington-Krugman-Melitz Encompassing Moduleという最新の国際貿易モジュールを包含したCGEモデルを開発した。開発に於いては、同センターのExecutive Director Thomas Hertel教授や、Robert McDougall氏の協力や助言を参考にして、生産性についての企業異質性をモデルに組み込むことに成功した。応用例として、ASEAN Economic Community での非関税措置(NTMs)削減の経済効果を分析した。(2) 同センターの協力のもと、投資と資本蓄積による逐次動学を組み込んだGTAPモデルと最新のデータベースを活用して、2011ー2035年の政策シナリオを構築し、米国抜きのTPP (TPP11)やRCEPの経済効果分析を実施した。海外直接投資と投資協定の実証モデルによる推計値を応用し、関税・非関税障壁・投資分野の自由化効果を分析した。分析で使用した最新のDynamic GTAP Database version 9について、同センターのAngel Aguiar氏から有益な助言を得た。また、Dynamic GTAPモデルの特性について、同センターのDirectorであるDominique van der Mensbrugghe教授からも有益なコメンントを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、以下の3点である。 (1) CGEモデルに組み込んだ、Armington-Krugman-Melitz Encompassing Moduleの挙動テスト:実際の政策分析への応用を念頭に、米国抜きのTPP (TPP11)やRCEP、ASEAN Economic Community、日EU等を挙動テストの対象として、様々な国や産業の組み合わせについて検証する。 (2) 国際学会での研究報告:2017年6月に開催されるGTAP Conference にて、開発したモデルによるTPP11の分析結果を報告し、他の研究者からのコメントやフィードバックをさらなるモデルの精緻化に活かす。 (3) 将来に向けた研究協力関係の構築:Purdue大学国際貿易分析センター、農業経済学部、経済学部、GTAP Conference の参加者らと、将来に向けた研究者間ネットワークの構築に努める
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