2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半インド証券取引所の機能不全と私的公的統治の失敗:未刊行史料が語ること(国際共同研究強化)
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15KK0128
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
野村 親義 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (80360212)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 証券取引所 / インド / 植民地 / 経済制度 / ボンベイ / 経営代理制度 / 長期資金 / 工業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、事業開始年度であった。2017年度の事業は、おもに、渡航準備、生活開始、共同研究開始、の3種からなる。 渡航準備:当初予定の8月渡航実現に向け、受け入れ先であるシンガポール国立大学の事務と調整しつつ、5月から具体的なビザの申請手続きを開始した。結論から言って、ビザの発給は大変な苦労を伴った。近年、シンガポール政府のビザ支給厳格化受け、ビザ申請に要する書類が多岐に及んだことに加え、申請を受け入れ先の大学事務を通じて行わなければならないことから、その手続きは煩雑を極めた。中でも苦労したのが健康診断書であった。研究代表者が居住していた大阪近郊で、シンガポール政府が要求する健康診断書を作成してくれる病院が皆無に近く、結果として別件でシンガポールに渡航したおり、同地で健康診断を受け必要書類を準備した。これらの手続きを経、6月末に発給された仮ビザを携え、とりあえず予定通り8月初旬にシンガポールに渡航し、以後1か月のシンガポールでの事務手続きを経て、ようやく9月に本ビザを得ることができた。 生活開始:ビザ以外の点に関しては、渡航後のシンガポールでの生活の始動は、研究代表者がこれまで経験したインドやイギリスでの生活の始動に比べて、格段に容易なものであった。とはいえ、仮ビザでのシンガポール滞在が1か月しか認められなかったこと、本ビザ発給に際し、ビザ発給主体との窓口になっていたシンガポール国立大学の事務手続きミスなどがあり、本ビザが発給される9月まで、落ち着かない日々を過ごしていた。 共同研究開始:ビザが発給され、かつ生活基盤が出来上がった9月末から、共同研究者のMedha Kudaisya准教授と連絡を取りつつ共同研究を進め、現在に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年8月にシンガポールに来てから、シンガポール国立大学の共同研究者Medha Kudiasya准教授と交流を深めつつ、(1)インドの証券取引所の機能の有様が工業金融に与えた影響について、(2)日本とインドの工業化と政府の政策との関係について、の2種の研究を行っている。 (1)については、研究代表者がこれまで行ってきた、タタ鉄鋼所やボンベイ綿紡績業など近代的大規模工業部門における長期資金調達行動に関する研究と、Kudaisya准教授が主として行ってきた、これら近代的大規模工業部門に多くの資金を融資してきた在来商人との関係に関する研究を照らし合わせ、植民地期インドの工業化に在来商人が果たした資金供給面での役割に関し、考察を深めた。これら考察の一部は、研究代表者の単著 NOMURA, CHikayoshi. The House of Tata Meets the Second Industrial Revolution: An Institutional Analysis of Tata Iron and Steel Co. in Colonial India, Springer, May 2018の3章や4章に反映された。 (2)については、研究代表者がこれまで行ってきた、20世紀前半日本とインドの金融・財政政策に関する歴史統計を用いた比較研究を、Kudiasya准教授が行ってきた、20世紀前半のインドにおける経済政策の有様に関する歴史分析を照らし合わせ、植民地期インドの金融・財政政策を含めた経済政策の特徴について、考察を深めた。これら考察の一部は、研究代表者の単著 NOMURA, CHikayoshi. The House of Tata Meets the Second Industrial Revolution: An Institutional Analysis of Tata Iron and Steel Co. in Colonial India, Springer, May 2018の6章や8章や、すでに最終稿提出済みの原稿、NOMURA, Chikayoshi. Historical roots of industrialisation and the emerging state in colonial Indiaに反映されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで続けてきた共同研究を継続し、インドの主要な資本家であるビルラ財閥をはじめとするインドの在来商人の資金がどのような経路でインドの工業部門に流入したのか、その際証券取引所はどのような役割を果たしたのか、また、これら資金供給を受け19世紀半ば以降インドで生じた工業化に政府はどのような役割を果たしたのか、など研究代表者とKudaisya准教授が共通して持つ関心事項に関する考察を深める。同時に、研究代表者は、これら在来商人の資金供給が、植民地期インドの近代的工業部門の企業統治に及ぼした影響について、考察を深める。 現在、研究代表者とKudaisya准教授は、2018年9月末京都大学で開催予定の日本経営史学会全国大会にて、他の2名のインド人若手研究者とともにインド経営史に関するセッションでの報告を申請中である。私たちの報告が当該学会により認められれば、本国際共同研究事業終了後の本年9月、研究代表者とKudaisya教授の共同研究の成果の一部を、学会にてまずは公表できるものと考えている。
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Research Products
(2 results)