2018 Fiscal Year Annual Research Report
Considering the Nation's image in the Post-Westphalia era: A comparatiev study of Unrecognized States in Remote Resions of Europe(Fostering Joint International Research)
Project/Area Number |
15KK0130
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (30348841)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 未承認国家 / 凍結された紛争 / ハイブリッド戦争 / 国家承認 / グランド・ストラテジー / 地政学 / 狭間の政治学 / 安全保障のジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の国際政治学では捉えきれないものであるにも拘らず、地域・世界を不安定化してきた「未承認国家」問題を、未承認国家問題とは切り離せない「凍結された紛争」の問題の検討と深めつつ、様々な事例を比較しながら明らかにしてゆくのが本研究の目的であり、その目的達成のためには国際共同研究は極めて有益であった。 本研究の主軸をなすのが、フィンランドのヘルシンキ大学アレクサンテリ研究所で2017年度に行った在外研究である。その間、同研究所のハンナ・スミス研究員(後に「欧州ハイブリッド脅威対策センター」に異動)と共同研究を進め、また、ドイツのIOSを拠点にした「サイレント・コンフリクト(凍結された紛争と同じ現象を指すが、参加研究者で議論をした結果、最適な用語だということになった)」に関する共同研究にもスミス研究員と共に参加した。共同研究を通じ、欧州からみた「未承認国家」の捉え方や脅威感を理解できたと共に、「未承認国家」を考える上でのハイブリッド戦争の重要性の理解や「未承認国家」の問題を「安全保障のジレンマ」というロジックで分析するアプローチなど、新たな研究の切り口を得ることができたことは極めて有益であった。2014年のロシアによるクリミア併合以後、欧州ではロシアのハイブリッド戦争やそれと大きく関わる未承認国家問題が深刻な課題となっており、欧州で本問題の研究が重視されていたことも共同研究の成功を支えてくれた。 未承認国家を分析する考え方が、ロシアに併合されたクリミアや日本の北方領土問題にも適用可能な部分があることから、分析の対象が拡大したことも大きな進展だと言えるだろう。 他方、アジアの未承認国家問題は欧州のそれとはかなり異なる論理で考えなければならないことも明らかになった。アジアでは、歴史認識や歴史背景が特に重要な要素であることから、歴史ベースの分析がより有益となることがわかった。
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