2018 Fiscal Year Annual Research Report
International Politics in the Arctic: Formation of the Regional Order and its Development(Fostering Joint International Research)
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15KK0133
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大西 富士夫 北海道大学, 北極域研究センター, 准教授 (20542278)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 北極 / 安全保障環境 / 北極NATO諸国 / 米国 / 中国 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ノルウェー防衛研究所に滞在し、現行の北極安全保障環境に関する共同研究を実施した。共同研究の一環として、ノルウェー防衛研究所、オスロ平和研究所、トロムソ大学、アイスランド大学、北海道大学の研究者たちと共に国際セミナーを組織し、米国、中国、ロシアの間のグローバルな大国間政治が北極国際政治に及ぼす影響について討議した。本年度の研究の結果、以下のことが明らかとなった。 まず、欧米とロシアとの対立は、北大西洋及び北極海における安全保障環境の悪化をもたらしている。ロシアは2008年以降の軍装備の近代化計画に沿う形で北極海(バレンツ海)における海上の要塞化(Bastion)を着実に前進させつつある。大西洋及び北極海でのこうした動きは、米国との軍事的均衡を確保するというロシアの基本方針の一環であるとみなせる。 これに対し、NATOは、対ロシア脅威認識が加盟国間で異なるという問題を抱えつつも、北大西洋における欧米間の海上輸送路の防衛を指揮する司令部を米ノーフォーク海軍基地に新設するとする決定を行うと共に、2018年秋に北大西洋での作戦展開を想定した軍事演習を実施し、ロシアへの警戒態勢を強化している。アイスランドにおいて米軍が空軍基地を再開するか否かが今後の焦点である。 米国との軍事的均衡を達成しようとするロシアの立場は、防衛的であるとみなせるが、非NATO北極諸国であるフィンランド、スウェーデンにおいてもセキュリティ・ジレンマを引き起こしており、これら2国をNATOと連携を一層強化させる方向へと作用している。 以上を纏めると、北大西洋及び一部北極海における安全保障の悪化は進行しつつあるが、北極諸国の沿岸警備隊協力が一時停止していることを除けば非安全保障領域には安全保障環境の悪化の影響が及んでおらず、北極における協調的な国際関係は継続している。
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