2016 Fiscal Year Research-status Report
国際標準の策定と適用が欧州の産業クラスターに与える影響の分析(国際共同研究強化)
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15KK0139
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳田 昭雄 立命館大学, 経営学部, 教授 (60330015)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 標準化 / CPS / 産学パートナーシップ / 欧州委員会 / EU / エコシステム / プラットフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新しい産業の創造とビジネス・エコシステムの形成に向けて、国際標準を戦略的に活用しているEUの標準化政策を取り上げる。具体的には、CPS(Cyber Physical Systems:サイバー・フィジカル・システム)産業を事例として取り上げ、その創造に向けて欧州委員会が組織したコンソーシアムAIOTI(Alliance for Internet of Things Innovation)における標準策定プロセスを調査・分析する。そのうえで、「新しい産業の創造に向かって産官学の様々なアクターの協調的な貢献を引き出す触媒」という「新しい標準観」を提示し、国際的かつ業際的な特質を持つ今日的な標準について、その概念モデルの構築を試みる。 欧州委員会にとって標準化活動は、産業創造という大きなビジョンの実現に向けた産官学協働の過程において現われてくる。そしてCPS産業の創造に資する主要な標準アイテムの雛形は、この競争前段階(pre-competitive stage)の産官学連携メカニズムを通じて生成されていく。本研究の実証研究の対象であるAIOTIは、2015年に欧州委員会主導により組織された。IoT社会を見据えて物理世界とデジタル世界をつなぐ横断型基幹科学技術としてCPSを位置づけ、標準化を通じた同技術の業際的な適用によって、CPSの産業化が始まっている。 28年度は、29年度から実施する現地調査および共同研究に先立ち、標準の概念モデル構築について標準を主題とした文献の渉猟を実施してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り、本プロジェクトの元になった科研費事業(基盤研究c「国際標準の策定と適用が欧州の産業クラスターに与える影響の分析」H26-28)を無事終了した。また、国際共同研究の実施に向けて、派遣先機関との受け入れ交渉を終え、共同研究者との研究アジェンダの洗い出しと精緻化を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ビジネス・エコシステムの形成プロセスの分析に有益と目されるプラットフォーム理論を取り上げ、標準との関わりを意識しながら先行研究のサーベイを行う。プラットフォームとは、システムを分割する汎用的なインターフェイスの一形態である。そしてIoT時代のビジネス・エコシステムは、そのようなインターフェイスを介した産官学の補完的なネットワークであり、産業アーキテクチャの垂直非統合化を促すものと想定している。また、共同研究・調査の実施に向けて、共同研究者及び国内外の研究パートナーと共に、研究アジェンダの洗い出しと精緻化、一部の実施にあたる。 すなわち、理論研究については、プラットフォーム理論を援用し、新産業の創造とビジネス・エコシステムの形成にあたって国際的かつ業際的な性質をもつようになった標準の新しい役割を提示し、標準の概念モデルの構築をはかる。また、複数のアクター間の相互作用に着目してプラットフォーム概念を構築してきた先行研究(e.g. David Evans, The Antitrust Economics of Multi-Sided Platform Markets, Yale Journal on Regulation, Vol20, 2003)のサーベイを実施する。 実証研究については、CPS産業に着目し、AIOTIにおける標準の策定過程を主に現地調査を通じて実証的に明らかにしていく。具体的には、仏国の公的研究所(Institute Mines-Telecom)と共同で平成29年9月から平成30年3月まで実地調査にあたる。
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