2018 Fiscal Year Research-status Report
微細包有物のマルチ揮発性元素トレーサー分析によるマントル内水循環の解明(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角野 浩史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90332593)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | 希ガス / ハロゲン / 水 / 沈み込み / マントル / メルト包有物 / 質量分析 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本に代表される沈み込み帯では、海洋地殻や堆積物など、異なる起源をもつ揮発性成分が異なる量比をもってマントルへと沈み込んでいると考えられる。本研究はこれまで定量的に見積もることの難しかった希ガスとハロゲンの沈み込み量を、最新のマルチコレクター希ガス質量分析計を用いた超精密同位体比測定をもとに決定することを目的とする。 本研究では日本をはじめとした世界各地の島弧の玄武岩類から分離した、メルト包有物を含むかんらん石とマントル起源かんらん岩捕獲岩を試料として用いる。本年度、国内ではかんらん石の分離作業と顕微赤外分光分析、そして予察的な希ガス同位体分析を行った。 英国マンチェスター大学のBurgess教授のもとでは、昨年度に多様なハロゲン組成を含むことを明らかにした南米大陸・パタゴニア地域で採取されたマントルかんらん岩捕獲岩について、原子炉(南アフリカSafari-1研究炉)における中性子照射とマルチコレクター希ガス質量分析計(ARGUS-VI)による高精度同位体分析を組み合わせた、極微量ハロゲン分析を行った。試料からの希ガス抽出に破砕法を用いた結果、通常のマントルと比較して臭素/塩素比とヨウ素/塩素比がともに高いハロゲンが、試料中の流体包有物に含まれていることが明らかになった。 オックスフォード大学のBallentine教授のもとでは、深海底堆積物中の間隙水に由来するハロゲンと希ガスを含むことを既に明らかにしている西南日本やカムチャツカ、フィリピン産のかんらん岩について、レーザー加熱とマルチコレクター希ガス質量分析計(ARGUS-VI+HELIX SFT)を用いた高精度同位体分析を組み合わせた、かんらん石一粒ごとの希ガス同位体分析を行った。その結果を顕微分光分析により求めた水の含有量と比較することで、マントルに沈み込んだ水中の希ガスとハロゲン濃度を正確に決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
渡航先の英国における極微量ハロゲンならびに希ガス分析は順調に実施できており、研究上ひじょうに意義のあるデータが得られている。得られた成果はアメリカ・ボストンにおける国際会議(Goldschmidt Conference)で報告した。一方で研究代表者の所属機関における学務のため渡航期間が限られ、より多くの分析データを得て当初計画の研究を完遂するには研究期間を延長し、再度英国に渡航する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度に得られた分析データを解析し、必要であればさらに異なる特徴を持った島弧(例えばカムチャツカ、西南日本など)で採取した火山岩から、かんらん石やマントル捕獲岩を取り出して追加分析用の試料とする。令和元年8月の英国渡航時には、これらの試料についてマンチェスター大学におけるかんらん石斑晶一粒ずつについてのハロゲン分析を行う。これによりマントルへと一旦沈み込んだものの島弧火成活動により再び表層へと戻っている揮発性成分の起源と量について制約を加えることができ、マントルのより深部へと沈み込む揮発性成分の起源と量を明らかにできると期待される。
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