2016 Fiscal Year Research-status Report
F特異点と標数0の双有理幾何学に現れる特異点(国際共同研究強化)
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15KK0152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 俊輔 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (40380670)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 代数幾何学 / 大域的F正則多様体 / 対数的Fano多様体 / 正標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度末の3月中旬にImperial College Londonへ渡航したため、今年度の滞在期間は20日足らずであり、まとまった研究成果を得るには至っていない。F特異点に関する予想の中で最も重要なものの一つである「標数0の射影代数多様体Xの十分大きい標数pへの還元が大域的F正則ならば、Xは対数的Fano多様体である」というK. Schwede・K. Smithの予想について、P. Cascini・田中公の両氏と議論した。大川新之介氏は混標数の変形理論を駆使することで2次元の場合を肯定的に解決したが、この大川氏の証明を精査して高次元化において困難な点を確認した。 また、Grauert-Riemenschneider型のコホモロジーの消滅定理(例えば、特異点解消f:Y→Xが与えられたとき、Yの標準層の高次順像は消滅するという主張)は、標数0の双有理幾何学では極めて重要な役割を果たすが、正標数では反例が知られている。しかし最近、Xが非特異ならば正標数でもYの標準層の高次順像が消滅することが、A. ChatzistamatiouとK. Rulingによって証明された。このChatzistamatiou・Rulingの結果をXがマイルドな特異点を許す場合に拡張することを考え、田中氏と議論した。 さらにImperial College London滞在中に、C. Birkar氏、權業善範氏、G. Rosso氏、R. Svaldi氏と共に、Cambridge大学にて開催された研究集会「Cambridge-Tokyo Algebraic Geometry Workshop 2017」の世話人を務め、正標数の双有理幾何学の最近の進展を概観する機会を設けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Imperial College Londonへの滞在は2回に分けて行う予定である。今回の滞在では、Cascini氏・田中氏との議論を通じて、大域的F正則多様体と対数的Fano多様体の対応(Schwede・Smithの予想)、Grauert-Riemenschneider型のコホモロジーの消滅定理の正標数における類似、といった問題の困難な点を洗い出す作業を行う予定であった。そういった意味で、本研究課題は「研究実施計画」通り進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ごく最近S. Kovacs氏が、Xが高々準有理特異点しか持たないならば、任意の特異点解消f:Y→Xに対し、Yの標準層の高次順像が消滅することを証明した。Kovacs氏の論文を精読してその手法を学び、Xがより悪い特異点を持つ場合への拡張を模索する。 Schwede・Smithの予想に関しては、權業善範氏と申請者は大川氏の結果(2次元の場合)の別証明を与えている。大川氏の手法と申請者の手法を組み合わせることを試みる。またジェットスキームの理論を利用することも考える。
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