2016 Fiscal Year Research-status Report
ディラック電子系物質における熱電効果の理論(国際共同研究強化)
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15KK0155
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
伏屋 雄紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00377954)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | スピン軌道結合 / ビスマス / 磁気抵抗 / バレートロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,理論と実験が緊密な連携を取り,熱電効果,およびスピン軌道結合の強い系についての研究サイクルを加速することである.平成28年度は,渡航準備期間として,主に国内でフランスとの共同研究を進めた. 仏グループは,量子効果が顕著になる強磁場領域のビスマスにおいて,従来の予測に反する電気伝導度の急激な上昇を観測した.このことは従来の「強磁場では,半導体になり,伝導度は大きく降下する」という予想と正反対の結果で,当初その起源はまったく不明であったため,それについての共同研究をスタートさせた. スピン軌道結合の強い系についてのこれまでのノウハウを生かし,まず始めに磁気抵抗による角度分解量子振動の実験を理論的に解析した.この時,最低ランダウ準位の磁場依存性について,磁場の2次の項を正確に扱えるよう,これまでの理論を改良した.これにより,65Tまでの電子状態を明らかにすることに成功した.これにより,伝導度の急上昇が100%バレー分極によるものであることを突き止めた.これまで磁場により完全バレー分極を達成できた例はなく,今回のビスマスでの報告が初めてとなった.その上,3つある電子バレーのうち1つを消すか,あるいは2つを同時に消すかということを,磁場の方向を変えるだけで制御できることも新たに見出した.このことは,バレー制御の研究に対しても新たな方向性をもたらす. また,ビスマス中電子の顕著な異方性が起源となり,電気伝導度の急激な上昇が起こることも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究によるフランス滞在は,主に平成29年度に行う.したがって,平成28年度はその準備期間であった.にもかかわらず,本研究の目的の一つである,スピン軌道結合の強い系における新しい現象が発見され,その起源を明らかにすることができた.しかも,それが当初計画の枠を超える,バレートロニクスへの新しいアプローチにつながったのは,想定外の成果であった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,予定通りフランスに滞在し,共同研究を進める.熱電材料であるBi, Sb, InSb, InAsなどについて,量子振動,磁気抵抗,ゼーベック効果,ネルンスト効果の実験およびその理論解析を進める. また,滞在先の研究機関を拠点に,オルセー大学,フランス国立強磁場研究所,フランスCEA研究所などの研究者と連携し,熱電研究だけでなく,トポロジカル絶縁体やスピントロニクス分野の研究者との交流を通して,新分野開拓に向けた国際研究ネットワークを拡充する.
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[Presentation] ビスマスにおける100%バレー分極と異常磁気抵抗2017
Author(s)
伏屋雄紀,Z. Zhu, J. Wang, H. Zuo, B. Fauque, R. D. McDonald, and K. Behnia
Organizer
日本物理学会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府・豊中市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
Invited
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[Presentation] ビスマスにおけるバレー分極と異常磁気抵抗2016
Author(s)
伏屋雄紀,Z. Zhu, J. Wang, H. Zuo, B. Fauque, R. D. McDonald, and K. Behnia
Organizer
日本物理学会
Place of Presentation
金沢大学(石川県・金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16