2017 Fiscal Year Research-status Report
衛星データシミュレータを用いた雲解像モデル検証手法の開拓(国際共同研究強化)
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15KK0157
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増永 浩彦 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (00444422)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 熱帯湿潤対流 / 放射対流相互作用 / 衛星観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は4月中旬に共同研究先のフランス気象力学研究所(LMD)に渡航し、9月下旬まで滞在した。現地共同研究者のSandrine Bony博士とは滞在中毎日のように情報交換を行い、頻繁に研究成果の議論を行うことができた。渡航後すぐに熱帯対流雲発達前後に現れる上層雲の放射効果に着目した衛星データ解析に着手し、対流強化に先立ち発達する上層雲の温室効果が対流力学に積極的な影響を与えている示唆を得た。この衛星観測データの解釈にあたり簡便な概念モデルを構築し、放射効果が浅い上昇流の強化を通じて短時間で対流発達に貢献している理論的可能性を裏付けることに成功した。この結果はJournal of the Atmospheric Sciencesに投稿し、2018年4月号に出版された。 フランス滞在期間中、研究成果の発表のため平成29年5月英国レディング大学を訪れてセミナーを行うとともに、同年7月にはデルフト工科大学(オランダ)で開催された国際会議で招待講演を行った。なお、LMDではBony博士のほかClaudia Stubenrauch博士らとも研究の親交を深め、並行して新たな共同研究の可能性を模索した。帰国後も引き続き研究成果の公表に積極的に取り組み、平成29年10月に米国コロラド州立大学大気科学科でセミナー講演、同年12月には米国地球物理学連合(AGU)秋季大会でのポスター発表などを行った。国内では平成30年3月福岡大科にて開催された熱帯気象研究会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フランスLMDではほぼ予定通りの期間研究滞在を実施し、実りある共同研究を進めることができた。当初の想定では、滞在中に意見交換を行ったアイディアをシーズとして帰国後も含めた1年ほどの期間で論文執筆を行い、平成30年度早々に論文投稿を考えていたが、研究成果が想定以上順調に整い、平成29年度中に執筆・投稿が実現し、以後査読プロセスも順調に捗ったためすでに論文が出版されている。また、主共同研究者のBony博士以外にもLMDのStubenrauch博士や英国レディング大学のHolloway博士など複数の海外研究者と共同研究のプロジェクトが立ち上がり、計画を超える規模の国際共同研究が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は出版済みの研究成果をさらに発展させ、熱帯収束帯(ITCZ)の周縁部で発達する雲対流の強化メカニズムの解明など新たな関連課題に取り組んでいく予定である。この課題は、米国Miami大学Brian Mapes教授と別途進めている研究成果と密接に関連しており、国際共同研究の新しい展開を拓くもの捉えている。また、平成29年度に滞在したLMDを平成30年度10月に再び訪れ、現地で3週間ほどBony博士らとの共同研究をさらに深める計画を進めている。
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