2017 Fiscal Year Research-status Report
衝突・振動による粉体の過渡レオロジーとその天体地形への応用(国際共同研究強化)
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15KK0158
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桂木 洋光 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30346853)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 粉体物理 / 天体地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はブラウンシュバイク工科大学に長期滞在し,実験研究を集中的に行った.まずは,真空チャンバー内に充填率が0.35のダスト凝集体を静置し,固体球を自由落下衝突(衝突速度は最大で3 m/s程度)させた場合のクレーター形成および破砕に関する実験を行った.得られた結果より,(i)衝突による動圧が低い場合はダスト表面に凹み状クレーターが形成され掘削によるイジェクションが全く見られないこと,(ii)衝突動圧が閾値を超えるとターゲットであるダスト凝集体の破砕現象が起こること,(iii)衝突による固体弾の減速ダイナミクスが粉体層に固体弾を衝突させた場合と同様のモデルで説明できること等が明らかになった.また,破砕の閾値となる動圧の値(衝突破壊強度に対応),固体弾の減速ダイナミクス・モデルにおけるフィッティング・パラメータ値,クレーター形状から見積もられたダスト凝集体の強度値等のくつかの値の間の相互関係について物理的説明を与えることに成功した.得られた結果とモデル化,解析,惑星科学的意義の考察などを論文としてまとめ,The Astrophys. J.誌で掲載されるに至った. 以上の一連の実験,解析,論文執筆が終わった時点で受け入れ研究者のブルム教授と残された期間で実施可能な研究項目について改めて相談し,当初の研究計画に挙げていた氷ターゲットを用いた衝突実験の実施ではなく,ダスト凝集体粒子と固体弾との微小重力環境での衝突ダイナミクスに関する実験に取り組むこととした.この実験系は前半に行った研究結果との比較検討等も自然に行えるものとなり,研究の一貫性を保つ上でも利点が大きかった. また,実験やデータ解析の合間に,欧州内で国際的に活躍する粉体物理研究者を複数訪問し,セミナー発表および研究議論等を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた氷ターゲットを用いた衝突実験を行うことはできなかったが,計画を随時見直すことにより科学的により興味深く実施にともなう困難も大きくない実験を遂行することができた.得られた成果の解析,論文執筆も順調に進み,内容をまとめた論文の比較的早い公表も実現することができた.この点に関しては当初の計画以上に研究が進んだ点と言える.また,最初に取り組んだ研究トピックに関する論文出版を早期に終えることができたため,更に異なる系での実験研究の実施も可能となった.具体的には,ホスト研究者であるブルム教授と相談し,実験室内ドロップタワーを用いた微小重力状況での衝突実験を行った.ターゲットとしてダスト凝集体による粒子群クラスターとガラスビーズを用い,両者の類似点と相違点を明らかにすることを目的とした.実験実施を終えた時点で予定滞在期間をほぼ終えたため,帰国後に引き続きデータの解析を進めている.以上のように,数ヶ月の滞在で複数の実験研究を実施し,最初に手がけた研究の結果について論文を出版できたことは当初の計画から考えると予想以上の進展と言うことができる.加えて,ドイツ滞在中に欧州内の粉体物理の研究グループを複数箇所訪問することもでき,国際研究ネットワーク構築の基礎を築くこともできており,この点でも当初の研究計画で想定した以上の進展があった部分と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
以上で述べた通り,今年度のブラウンシュバイク工科大学長期滞在期間中に二つの実験を行ったが,そのうち一つのトピックについては未だデータの整理,解析を終えられていない.来年度はこのデータの解析を進め,ダスト衝突現象の物理的理解を深めることが大きな目標となる.その中でブルム教授と幾度か研究打ち合わせを行う予定としている.また、得られた成果の発表についても精力的に取り組みたい.学会・研究会での発表,論文の出版などが今後の活動の方向性となる.
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