2018 Fiscal Year Research-status Report
中性子散乱によるs電子強磁性の機構解明(国際共同研究強化)
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15KK0165
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | ゼオライト / アルカリ金属 / ナノクラスター / 強磁性 / 中性子回折 / 高圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
配列したナノ空間を有するゼオライト結晶にアルカリ金属をドープして,アルカリ金属ナノクラスターを配列させると,結晶構造と金属種の組合せに依存して強磁性・反強磁性・フェリ磁性などの様々な磁気秩序が,磁性元素を含まないにも拘わらず発現する.本研究では,中性子回折やミュオンスピン回転/緩和をこれらの系に適用し,s電子が磁気秩序を示す機構を解明することを目的としている.H30年度は以下の研究を進めた. H29年度に作成した新型の高圧セルを用いて,ゼオライトLow-silica X (LSX)中のNa-K合金クラスターのフェリ磁性がヘリウムガス加圧によって大幅に増強される系についてのミュオンスピン回転/緩和実験を英国のラザフォードアップルトン研究所(RAL)において実施した.約70 K以下で発現する新しい強磁性相に由来する内部磁場を観測することに成功した. 一方,同物質の常圧下のフェリ磁性相について,中性子回折実験を国内施設(J-PARC MLF TAIKAN)で実施した.スピン偏極中性子ビームを用いたflipping ratio法によって,長距離秩序した強磁性磁気モーメントを観測することに成功し,磁気形状因子のQ依存性を抽出できた. これらの成果と,H29年度までの成果に関して,国際会議で3回(内2回は招待講演),国内会議で2回の研究発表を行った.また,圧力によってアルカリ金属をドープした系で現れる新たな強磁性相に関して論文を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心課題の1つとしてラザフォードアップルトン研究所(RAL)との共同研究で進めてきた,高圧ヘリウムガス下でのミュオンスピン回転/緩和実験の実施にこぎ着けた.日本国内ではこのような高圧ガス環境を準備することは法律的に困難であり,ガスによって試料を加圧する高度な技術を有しているRALと共同研究を進める意義が最も深いテーマであったため,これを実施できたことは重要な進展と言える.また,偏極中性子回折実験は国内施設で効率的に実施でき,こちらでも成果が上がった. また,本研究課題の物質系は特殊で,他に合成できる研究者がいないが,これまでの研究成果が認知されつつあり,H30年度は2回の国際会議での招待講演の機会に恵まれた. これらのことから,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
採択当初はH30年度までの研究課題であったが,1年間の事業期間延長を行った.R1年度は,本研究を今後さらに発展させるための新物質合成と,得られた成果の論文執筆に集中的に取り組む.
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