2017 Fiscal Year Research-status Report
高ルミノシティLHCに向けたATLASミューオン検出器システムの高度化(国際共同研究強化)
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15KK0166
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
越智 敦彦 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40335419)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 素粒子実験 / 粒子測定技術 / LHC実験 / ATLAS実験 / MPGD / ガス放射線検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究に掛かる国際共同研究のために、平成29年9月下旬より約一年間の予定でスイス・ジュネーブにあるCERN(欧州素粒子研究機構)への長期滞在を開始した。平成29年度中の共同研究による実績の主なものは、(1) ATLAS Micromegas 検出器の、高放射線環境下における長期動作試験と、(2)ATLAS phase II upgrade の高η検出器としての高抵抗型μ-PICの開発と、CERN施設を用いたビーム試験、及びX線試験、の二つが挙げられる。 高ルミノシティLHC実験においては、使用する検出器は長期に渡って強い放射線環境下に晒されることになる。上記(1)では、先行研究で問題となっていたシリコンの供給源となる物質を検出器内部から慎重に取り除いた状況で、ATLAS エンドキャップミューオン検出器(NSW)上での動作に匹敵する放射線量をMicromegas 検出器にHL-LHC 40年分以上に匹敵する照射する試験をCERNのガンマ線照射施設GIF++で行い、検出器に目立つ劣化は現れないことを確認した。この研究により、ATLAS Micromegas 検出器の長期動作における安全性を確立した。 上記(2)のATLAS phase II upgrade へ向けたμ-PIC検出器開発については、より高い放射線雑音環境下で信号となるμ粒子のトラックを捉える必要が出てくる。本年度は、開発を進めている高抵抗電極μ-PICをCERNのSPSビームライン、及びRD51 collaboration の実験室のX線発生装置などを使い、二次元のデータ読出しについての実証実験を行い、成功させた。なお、このμ-PIC検出器の提案は、ATLAS phase II upgrade へ向けたミューオン検出器のTechnical Design report に含まれることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATLAS実験及びRD51の共同研究のための長期渡航は、平成29年度後半からの予定であったが、前半に比較的短期の渡航を複数回加えることで、現地での研究をスムーズにスタートさせることができた。一つには、比較的長期の実験期間の必要となるATLAS Micromegas の高放射線動作試験について、予め4月及び6月の渡航で装置をセットアップすることにより、9月以降に十分な放射線照射後の検出器動作に関する研究を行うことができた。また、当初の長期滞在開始予定である9月末のすぐ後、10月半ばに、CERNのパイ粒子・μ粒子ビームを用いた実験を行う機会があったが、これについても、事前の準備があることで比較的スムーズに取り組むことができた。 一方で、当初予定されていた、ATLAS NSW建設へ向けたCERNでの大型Micromegas 検出器の組み立てについては、計画全体の遅れから今年度はまだ行われていない。このため、現地での研究内容については一部当初から変更し、ATLAS実験Phase II upgrade へ向けた新検出器のR&Dに着手している。こちらについては、独自に開発している高抵抗型μ-PICのビーム試験やX線を用いたイメージング試験などに成功し、将来のATLAS実験へ使用する検出器として提案できるところまで来ている。 以上より、現在までの研究の達成度は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大型のマイクロメガス検出器の組立が始まる予定であり、この検出器開発を最大の目的とする。これは、MPGDを用いた検出器としてはこれまで例の無い最大級のサイズを持つものであり、実現のためには多くの研究要素が必要であり、また我々を含めこれまでその部品の製作に関わった研究者たちの共同研究によって組みたてられるものである。現地に長期滞在することにより、この共同研究グループの中で主導的地位を獲得しつつ研究を推進する予定である。 同時に、CERN滞在の研究環境を活かして、新検出器の開発及び試験にも引き続き取り組んでいく。具体的には、2018年の5月と8月に、それぞれ1~2週間にわたってCERN SPS の140 Gev パイ粒子/ミュー粒子ビームラインのテストビームタイムを取得しており、これらの現地設備を用いて、新検出器の動作条件の探索、性能評価などを現地研究者と共同で行っていきたい。
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[Presentation] Japan MPGD community2017
Author(s)
Atsuhiko Ochi
Organizer
5th International Conference on Micro Pattern Gaseous Detectors (MPGD2017) (Philadelphia, USA)
Int'l Joint Research / Invited
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