2016 Fiscal Year Research-status Report
非クラマース系の多極子自由度が誘起する強相関電子現象（国際共同研究強化）
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15KK0169
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| Research Institution | Hiroshima University |
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Principal Investigator |
鬼丸 孝博 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (50444708)
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| Project Period (FY) |
2016 – 2018
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| Keywords | quadrupole / superconductivity / neutron / thermal expansion |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の対象物質である非クラマース系PrIr2Zn20の反強四極子秩序の秩序変数に関して、磁場[100]方向における中性子回折実験をフランスのレオン・ブリルアン研究所にてJean-Michel Mignot博士と行った。前年度に行った磁場[110]方向における中性子回折実験の結果と合わせ、反強四極子秩序相の主要な秩序変数はO22型の四極子であることを同定した。一方、磁場に誘起される反強磁性の成分はO22型から予想される[1-10]方向ではなく[1-11]に近い方向を向いており、磁場で誘起される四極子以外の多極子の寄与が示唆される。また、構造解析から明らかになった四極子の配列は、最近接で強的、全体としては反強的な複雑な構造をとる。Prイオンがダイヤモンド格子を組んでいるため、四極子のフラストレーション効果が関与している可能性がある。平成29年2-3月に、イギリスのラザフォード・アップルトン研究所において、関連物質PrRh3の非弾性中性子散乱実験を行い、結晶場効果による複数の磁気励起を観測した。平成28年6月と12月にフランスのILL研究所にて中性子回折実験を行った。
PrIr2Zn20の単結晶を用いて、熱膨張と磁歪の測定をドイツのアウグスブルグ大学のPhilipp Gegenwart教授の研究室にて行った。熱膨張係数は反強四極子秩序を示す温度付近で異常を示し、また磁場中では符号の反転を伴う異常を観測した。また、磁場[100]方向での磁歪は磁場５テスラ付近で極小値をとり、磁場依存性は熱電能や弾性定数の振る舞いとよく対応することが分かった。磁場によって反強四極子秩序が抑制され、四極子と伝導電子の相互作用に起因する格子異常が発現していると考えられる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象である非クラマース系のPrIr2Zn20の反強四極子秩序の秩序変数に関して、磁場[100]と[110]方向での磁場中中性子回折実験から四極子秩序の秩序変数を同定した。微視的手法によりこの系の秩序変数を同定したのは初めての例である。これらの成果に関する原著論文をPhys. Rev. Bに投稿し、平成29年度に掲載された。実験としては3He-4He希釈冷凍機と超伝導マグネットを用いた難しい実験であったが、レオン・ブリルアン研究所のJ.-M. Michel博士と専門技術員の支援により、順調に実験を遂行できた。
PrIr2Zn20の熱膨張と磁歪の測定では、磁場５テスラ付近で異常を観測した。これは比熱や電気抵抗率で磁場誘起の重い電子状態が見出された領域に近い。また、熱電能や弾性定数の異常な振る舞いとよく対応している。この原因については未だ不明であるが、格子異常が検出されたことは四極子が強く関与していることを示唆する重要な結果である。こちらも3He-4He希釈冷凍機と超伝導マグネットを用いた実験であったが、アウグスブルグ大学の研究室の大学院生と技術職員の支援で、実験を順調に遂行できた。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成２９年度は、４～５月、７～９月にアウグスブルグ大学でPrIr2Zn20の異なる磁場方向での熱膨張と磁歪を測定する。また、同型構造のPrRh2Z20についても、同測定に適当な単結晶の育成に成功したので、これから熱膨張と磁歪の測定を開始する。
平成２９年６月には、レオン・ブリルアン研究所で中性子散乱実験を行う。すでにビームタイムの課題申請は採択され、約２週間のビームタイムが認められている。上記で作製したPrRh2Zn20の大型単結晶を用いて、磁場[110]方向での磁場中中性子回折実験を行う。PrIr2Zn20の秩序変数との比較を通して、この系における四極子の役割を微視的に明らかにする。単結晶の軸出し、加工はすでに広島大学で終えており、実験の準備は整っている。
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[Journal Article] Structural, Magnetic, and Superconducting Properties of Caged Compounds ROs2Zn20 (R = La, Ce, Pr, and Nd)2017
Author(s)
K. Wakiya, T. Onimaru, K. T. Matsumoto, Y. Yamane, N. Nagasawa, K. Umeo, S. Kittaka, T. Sakakibara, Y. Matsushita, and T. Takabatake
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 86
Pages: 034707-1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Anisotropic B-T Phase Diagram of Non-Kramers System PrRh2Zn202017
Author(s)
T. Yoshida, Y. Machida, K. Izawa, Y. Shimada, N. Nagasawa, T. Onimaru, T. Takabatake, A. Gourgout, A. Pourret, G. Knebel, and J.-P. Brison
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 86
Pages: 044711-1-10
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Quadrupole-Driven Non-Fermi Liquid and Magnetic-Field Induced Heavy Fermion States in a Non-Kramers Doublet System2016
Author(s)
T. Onimaru, K. Izawa, K. T. Matsumoto, T. Yoshida, Y. Machida, T. Ikeura, K. Wakiya, K. Umeo, S. Kittaka, K. Araki, T. Sakakibara, and T. Takabatake
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 94
Pages: 075134-1-8
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 強相関立方晶Pr化合物における4f基底状態を反映した角度分解内殻光電子スペクトル線二色性の観測2017
Author(s)
濵本諭, 藤岡修平, 金井惟奈, 山神光平, 中谷泰博, 藤原秀紀, 木須孝幸, 東谷篤志, 山崎篤志, 門野利治, 今田真, 田中新, 玉作賢治, 矢橋牧名, 石川哲也, 松本圭介, 鬼丸孝博, 高畠敏郎, 関山明
Organizer
日本物理学会2017年春季大会
Place of Presentation
大阪大学 豊中キャンパス
Year and Date
2017-03-16 – 2017-03-20
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[Presentation] PrT2Zn20(T=Ir, Rh)のパルス強磁場中磁気抵抗測定2016
Author(s)
三田村裕幸, E. Kampert, T. Foerster, K. Goetze, S. Zherlitsyin, J. Wosnitza, 榊原俊郎, 脇舎和平, 松本圭介, 鬼丸孝博, 高畠敏郎
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
金沢大学 角間キャンパス
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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[Presentation] 四極子秩序をもつPrPb3の高圧物性2016
Author(s)
郷地順, 石垣賢卯, Bosen Wang, 上床美也, 狩野みか, 鬼丸孝博, 鈴木博之, 榊原俊郎
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
金沢大学 角間キャンパス
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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