2017 Fiscal Year Research-status Report
非クラマース系の多極子自由度が誘起する強相関電子現象(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0169
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鬼丸 孝博 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (50444708)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | quadrupole / superconductivity / neutron / thermal expansion |
Outline of Annual Research Achievements |
多極子が活性となる希土類の非クラマース系PrT2Zn20 (T=Ir, Rh)の四極子が関与する低温物性に関して、フランスのレオン・ブリルアン研究所にて中性子散乱実験を行い、ドイツのアウグスブルグ大学で熱膨張・磁歪の測定を行った。 中性子散乱実験は、J.-M. Mignot博士との共同研究として行った。昨年度までの共同研究でPrIr2Zn20の四極子秩序の秩序変数を同定したので、その結果を参考にして、PrRh2Zn20の磁場[100]と[110]方向での磁場中中性子回折実験を行った。波数空間の主要な軸に沿ってラインスキャンを行ったが、磁場誘起の反強磁性ピークは観測されなかった。PrIr2Zn20とは秩序変数が異なっていると考えられ、高温での構造相転移による対称性の低下が秩序変数に関係している可能性がある。また、同型構造をとるNd化合物の粉末中性子回折実験を行った。実験は3He-4He希釈冷凍機と超伝導マグネットを用いた難しい実験環境であったが、レオン・ブリルアン研究所のMignot博士と専門技術員の支援により、順調に実験を遂行できた。 アウグスブルグ大学では、P. Gegenwart教授との共同研究として、PrIr2Zn20の熱膨張と磁歪の測定を行った。磁場に対して平行方向と垂直方向で熱膨張・磁歪を測定し、磁場中で大きな異方性を発現することを見出した。結晶場と四極子相互作用を考慮した計算により、高磁場・高温の常磁性相における振る舞いを再現できたが、低磁場・低温領域で観測した異常な温度・磁場依存性は再現できなかった。この原因は未だ不明であるが、四極子を介した異方的なc-f混成が格子異常に関与している可能性がある。これらの実験では、3He-4He希釈冷凍機と超伝導マグネットを用いたが、アウグスブルグ大学の研究室の大学院生と技術職員の支援のもと、実験を順調に遂行できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、多極子が活性となる非クラマース系PrT2Zn20 (T=Ir, Rh)の反強四極子秩序に関して、中性子散乱実験ならびに熱膨張・磁歪の測定を行ってきた。レオン・ブリルアン研究所で行った磁場中中性子回折実験により、PrIr2Zn20の秩序変数を同定することに成功し、その測定・解析結果を原著論文にまとめた。また、同型構造のPrRh2Zn20については、これまでのところ四極子の秩序変数の同定には至っていない。転移温度が3He-4He希釈冷凍機の最低温度と近いため、秩序変数の発達が不十分であったか、秩序ベクトルが異なっているか、のいずれかが考えられる。また、4f3配位のNdIr2Zn20の粉末中性子回折を行い、反強磁性秩序に伴う超格子反射の観測に成功した。 アウグスブルグ大学でのPrIr2Zn20の熱膨張と磁歪の測定では、磁場に対して平行方向と垂直方向で大きな異方性が観測された。結晶場と四極子相互作用を考慮したモデル計算を行い、実験結果について考察した。また、四極子秩序温度以下で、熱膨張係数の発散的な振る舞いが観測され、四極子揺らぎの関与が示唆された。また、PrRh2Zn20の熱膨張・磁歪の測定を開始した。これまでの測定で、PrIr2Zn20とよく似た振る舞いを示すことを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、アウグスブルグ大学でPrRh2Zn20の異なる磁場方向での熱膨張と磁歪を希釈冷凍機と超伝導マグネットを用いて測定する。PrIr2Zn20で観測された異方的な振る舞いが予想されるので、結晶場パラメータと四極子相互作用を考慮したモデル計算により考察を行う予定である。また、レオン・ブリルアン研究所では、4f3配位のNd系の1-2-20系の粉末試料を用いて中性子回折実験を行う。ビームタイムの課題は現在申請中であり、採択されれば30年度後期に約1週間のビームタイムが確保できる。反強磁性秩序に伴う磁気構造について明らかにし、非クラマース系との対応について調べる。試料の作製はすでに広島大学で終えており、実験の準備は整っている。
|
Research Products
(20 results)