2017 Fiscal Year Research-status Report
113番元素の第一イオン化エネルギー決定に向けた新しい測定手法の開発(国際共同研究強化)
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15KK0175
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
佐藤 哲也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (40370382)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | イオン化エネルギー / 超重元素 / ローレンシウム / 相対論効果 / アクチノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
超重元素と呼ばれる原子番号が100を超える重い元素は、その中心電荷が非常に大きいため、軌道電子が影響を受け(相対論効果)、化学的性質を決定づける最外額電子軌道までが変化する場合があることが期待されている。しかしながら、このような元素は重イオンビーム核融合反応によって生成が可能であるものの、生成した同位体はすべて短寿命であり、また得られる量も非常に少ない。そのため、その化学的性質は未だよくわかっていない。 そのような超重元素のひとつである103番元素ローレンシウムは、アクチノイド系列の末端に位置する。ローレンシウムは、強い相対論効果の影響によって、初めて最外殻電子が周期表に従わないことがかねてより予測されていた。この変化後の価電子配置は113番元素ニホニウムと一致すると考えられており興味深い。申請者は、第一イオン化エネルギー測定により、ローレンシウムの電子配置が確かに周期性に従わないことを強く示唆する結果を得た。そこで、この成果を発展させ、超重元素のスピン決定により価電子配置を実験的に決定する手法開発を目指す。 原子のスピンは、原子ビームを不均一磁場中に通過させ、その際のビーム分裂を観測することによって決定できる。しかしながら、実験の難しさから、超重元素の原子ビーム生成技術は確立されていない。そこで、第一イオン化エネルギー測定で開発したガスジェット結合型高効率表面電離イオン源の技術を応用し、単一原子に応用可能な原子ビーム生成法の開発を進めた。今年度は、ドイツ マインツ大学において、原子ビーム生成法およびその周辺技術の開発をおこなうとともに、スイス ポール・シェラー研究所においてシミュレーションコードの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ マインツ大学TRIGA実験施設に設置されているオンライン同位体分離器(TRIGA-ISOL)において、超重元素原子ビーム発生法開発に向けた基礎実験を行った。TRIGA-ISOLは、主にウランなどのアクチノイドの熱中性子誘起核分裂によって生成する短寿命核分裂生成物を、ガスジェット搬送法により迅速にイオン源へと導入し、イオン化ののち質量分離したイオンビームを高精度質量測定を目的としたTRIGA-TRAP装置等に供する実験装置である。TRIGA-ISOLでは申請者設計によるイオン源を用いて生成したウラン233の短寿命核分裂生成物イオンビームを、RFQイオントラップに入射し、質量測定に必須な30 keVから1.1 keVに減速することに成功した。これらの結果は同大学のJ. Grund氏と協力して論文投稿の準備を進めている。 さらに、効率的なガスジェット搬送のため、エアロダイナミクスレンズ開発の基礎実験を行った。レンズの構造決定に重要なエアロゾル粒子径分布を、同大学核化学研究室が所有する測定装置を使用して測定した。測定結果を元に設計したレンズを用いることで、100 μmのエアロゾル粒子に対して0.5 mm以下の収束効果が得られると期待できる。本装置により、原子ビーム発生装置の高効率化のみならず、キャビティ効果の増大による表面イオン化効率の増倍、および超重元素用次世代イオン源として開発予定のプラズマイオン源に必須なイオン源内の高真空化といった効果が見込まれる。 スイス ポール・シェラー研究所では、表面電離イオン源内での原子・イオンの挙動をシミュレーションするモンテカルロ・コードの開発を行った。高温金属表面の吸着-脱離挙動およびイオン源内プラズマ効果を考慮することで、実験結果をよく再現することに成功した。本成果は、プログラムの改良ののち論文化する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
原子ビーム発生装置の開発状況としては、オフライン実験用テストベンチを構築し、テスト実験を開始した。現在、マクロ量で利用できるエアロゾル粒子を用いて、ビームの高品質化に向けた調整を行っている。今後、今回の国際共同研究で設計・開発をおこなったエアロダイナミクスレンズを組み合わせ、今年度内にビーム生成の最適条件を決定し性能評価をおこなう予定である。原子ビーム発生法の開発の進捗に応じて、マインツ大学・ドイツ 重イオン研究所において、具体的なスピン測定用マグネットの設計を開始することで一致している。 また、今回の研究の過程で、高温金属表面を利用した真空クロマトグラフ法の超重元素への応用の可能性などが見出された。ロシアで建設が進められているSHE-Factoryを用いて、113番元素ニホニウムの化学実験の実現可能性について議論を行っており、日本-スイス-ロシアで国際共同研究を進める方向で、現在調整を行っている。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Adsorption behavior of Lr on a Ta surface at high temperature2017
Author(s)
T. Tomitsuka, Y. Kaneya, T. K. Sato, M. Asai, K. Tsukada, A. Toyoshima, A. Mitsukai, H. Makii, K. Hirose, A. Osa, K. Nishio, Y. Nagame, K. Ooe, S. Goto, M. Sakama, M. Shibata, Y. Shigekawa, Y. Kasamatsu, P. Steinegger, R. Eichler, J. Grund, Ch. E. Duellmann, J. V. Kratz, A. Yakushev, V. Pershina, M. Schaedel
Organizer
6th Asia-Pacific Symposium on Radiochemistry (APSORC17)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Adsorption Behavior of Lawrencium on Tantalum Surface2017
Author(s)
Y.Kaneya, T.Tomitsuka, T.K.Sato, M.Asai, K.Tsukada, A.Toyoshima, A.Mitsukai, H.Makii, K.Hirose, A.Osa, K.Nishio, Y.Nagame, K.Shirai, K.Ooe, S.Goto, M.Sakama, H.Kamada, M.Shibata, Y.Shigekawa, Y.Kasamatsu, P.Stenegger, R.Eichler, J.Grund, Ch.E.Duellmann, J.V.Kratz, A.Yakushev, V.Pershina, and M.Schaedel
Organizer
3rd International Symposium on Super-Heavy Elements “Challenges in the studies of super-heavy nuclei and atoms”. SHE 2017
Int'l Joint Research
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