2016 Fiscal Year Research-status Report
格子QCDで探るアクシオン宇宙(国際共同研究強化)
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15KK0176
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
北野 龍一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50543451)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、素粒子標準模型における強いCP問題を考察することにより、標準模型の背後にあるより大きな物理像を探るとともに、ゲージ場の量子論の非摂動的性質の理解へ迫るものである。 本年度は、カリフォルニア大学サンタクルツ校、デービス校、バークレー校に滞在し、これまでの研究成果や、先方の研究に関する議論を行った。サンタクルツ校では、Michael Dine氏と最新の格子ゲージ理論に基づいた位相感受率の計算に関する議論を行った。強いCP問題の有力な解として、非常に軽い仮想粒子アクシオンが存在するというものがある。Dine氏はこのアクシオンが現在の宇宙にどれだけ残存しているのかを初めて計算した研究者の一人で、準古典近似に基づくゲージ理論の非摂動計算の第一人者である。今回、研究代表者を含むグループで格子ゲージ理論に基づく計算結果が得られたことを受け、その結果と準古典近似計算との相違とその起源についての議論や、アクシオン残存量へのインパクトについての議論を行った。 デービス校では、より基本的な場の理論の構成法についての議論をMarkus Luty氏と行った。強いCP問題と量子異常とよばれる量子的なカレント非保存の性質は密接な関係を持っている。Luty氏の現在研究している新しいくりこみ法により、量子異常の新しい定式化についての議論を行った。また、デービス校のJohn Terning氏とも、量子色力学の有限温度計算についての議論を行った。 バークレー校では、宇宙における暗黒物質についての議論をYasunori Nomura氏、Keisuke Harigaya氏と行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、3箇所の研究機関を訪れ、セミナー発表を行うとともに、研究機関でのホスト研究者と今後の研究に有用な議論ができている。特に、Michael Dine氏とは、世界の最新の研究結果を踏まえた新しい研究の方向性について議論できている。準古典近似であるインスタントン的描像はゲージ理論において、系を高温状態にもっていくとよい近似となることが知られているが、それでは、低温ではその描像は消えていくのか、それとも何かしら定性的な性質は残るのか、今後の数値計算により検証していく方法論などについて、具体的な議論を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、Dine氏と連携し、トポロジー価密度の相関関数の計算などを行い、インスタントン描像でそれが理解できるのかどうか検証していく。また、有限のθ項が存在するときのゲージ理論の性質を探り、カラー閉じ込めとの関連など、場の理論の基本的な性質について探っていく。
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