2016 Fiscal Year Research-status Report
気候変動に伴う赤道準2年振動の変化メカニズムの解明(国際共同研究強化)
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15KK0178
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
河谷 芳雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 主任研究員 (00392960)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 赤道準2年振動 / 中層大気 / 予測可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の主目的は、気候モデルによる赤道準2年振動(QBO)の予測可能性を定量的に把握し、季節予報におけるQBOの役割を解き明かすことで、基課題のQBO変化メカニズム解明研究から、より実用性に繋がる季節予報研究にまで大きく発展させることである。 QBOは主に小規模な大気重力波によって駆動されており、気候モデルで再現させるのが最も難しい気象現象の1つである。世界の殆どの研究機関で重力波パラメタリゼーションをモデルに組み込むことでQBOを再現しており、大きな不確実性を引き起こす主要因となっている。そこで、同パラメタリゼーションを用いないMIROC気候モデルを用いてQBOを再現させ、QBO予報における不確実性の軽減に関する考察も行うことにした。重力波パラメタリゼーションを用いない申請者による唯一の気候モデルQBO実験は、国内外の状況を鑑みても独創的・先駆的である。 平成28年度にMIROC気候モデル(東京大学、国立環境研究所、海洋研究開発機構で共同開発)を、本研究目的であるQBO季節予報実験が遂行できる仕様に構築した。QBOの予報精度を精査する為に、異なるQBO位相・季節の状態から実験を行った。必要な境界データを整備し、初期値はECMWFの再解析データ(ERA-I)から作成した。合計で30ケースの異なる初期状態から実験を行い、各々の積分期間は9ヵ月、アンサンブル数は5個とした。英国滞在中にこれらの実験を終え、解析にも着手したところ、QBO予報スキルは、QBO位相、季節、高度などに強く依存することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在参画している成層圏研究の為の再解析比較国際プロジェクト(S-RIP)及び気候モデルQBO国際比較プロジェクト(QBOi)の代表メンバーである、Oxford大学Gray教授及びOsprey博士が所属する英国Oxford大学に2016年6月2日から2017年2月1日まで滞在した。 英国滞在中に、QBOiプロジェクトで扱うモデル実験をプロコトルに沿って行い、基盤となる実験を完了させた。QBOiは基課題の内容である地球温暖化時のQBO変化に関する実験と、本課題で取り扱うQBO季節予報実験の両方を含んでおり、得られた結果のモデル間比較を目的としている。実験はGray教授及びOsprey博士と、英国モデルとの比較や議論を行いながら遂行した。平成28年度末には日英米独加仏韓豪蘭丁伊の各国のモデルデータが出そろい、これらの国々の研究者との共同研究も開始した。帰国後も密に連絡を取り合い、英国滞在中に構築した体制を維持して研究を継続している。 交付申請書に記載した研究計画に沿って気候モデル実験が予定通り進み、データ解析の進捗も順調である。基課題の目的であるQBO変化メカニズム解明研究から、本課題のQBO季節予報の可能性を考察できるように発展させることができた。論文執筆にも取り掛かっており、順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に沿って、引き続き得られた気候モデル実験のデータ解析を行い、国際共同研究を通して成果をまとめ、共著論文化していく。
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