Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フラーレン部分骨格の進化した構築法の開発およびリチウム内包フラーレンの新規触媒的官能基化反応の開発を行い、国際共同研究を通してエネルギー問題解決に役立つ新規n型半導体材料の効率的な合成と新機能の創出を目的としている。本年度では新規一電子酸化反応による新しいπ拡張多環式芳香環の構築に成功した。また新規リチウム内包フラーレンの合成を試みた。 1.新規一電子酸化反応による芳香環化反応:1価の塩化銅触媒と過酸化剤、またはDDQ一電子酸化剤を用いると9-(biphenyl-2-ylmethylene)-9H-fluoreneのアルケン部位に一電子酸化反応が選択的に進行し、それに伴う連続的Friedel-Crafts反応によるスピロ環化反応と1,2-aryl転移反応によりねじれた平面構造を有するdibenzo[g,p]chrysene骨格が効率的に構築できることを見出した。特に、本方法を用いることで様々な既存および新規π拡張多環芳香族炭水化物、例えば、benzo[f]naphtho[1,2-s]picene、hexabenzo[a,c,fg,j,l,op]tetracene、tetrabenzo[a,c,f,m]phenanthro[9,10-k]tetraphene、tetrabenzo[a,c,f,m]phenanthro[9,10-k]tetraphene、tetrabenzo[a,c,f,k]phenanthro[9,10-m]tetraphene、tetrabenzo[a,c,f,o]phenanthro[9,10-m]picene、S-type heliceneなどの合成が可能になった。 2.リチウム内包フラーレンの官能基化の試み:独自に開発したフラーレンの官能基化反応を用いて官能基化リチウム内包フラーレンの合成を試みた。例えば、Mn粉末を用いたリチウム内包フラーレンと1,2-bis(bromomethyl)benzeneの環化反応では、のぞみのモノ及びビス環化付加体のほか多置換環化付加体も生成しやすいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では新しい一電子酸化反応の開発に半導体および発光材料候補として様々なねじれたπ拡張多環芳香族炭水化物化合物の合成に成功した。これは当初予期してなかった結果であるが、本結果は高く評価され国際総合誌のNature Communication(2016, 8, 15073)に掲載された。また、当初計画したリチウム内包フラーレンの官能基化の開発は現在進行中である。
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