2016 Fiscal Year Research-status Report
強結合を介したプラズモニック化学反応の実証のためのプラットフォーム開発(国際共同研究強化)
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15KK0188
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山本 裕子 香川大学, 工学部, 特別研究員 (00598039)
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Project Period (FY) |
2015 – 2017
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Keywords | チップ増強ラマン散乱 / 単分子ラマン測定 / プラズモニック化学反応 / 銀ナノワイヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究目標は、ドイツ イエナ大学 Deckert研究室に渡航し国際共同研究を行いながらチップ増強ラマン散乱(TERS)を用いたプラズモニック化学反応センシングに関する研究を遂行することとした。本研究目標に従い研究代表者は、平成28年4月末~平成29年2月末の日程でドイツに渡航し、Deckert 教授本人と直接共同研究を行った。残念ながらZhang 博士とは渡航期間の重なりが小さかったため、予定していた形での共同研究はできなかった。 本年度の研究実績は以下の通りである。まずは今回の渡航での最大の目的である、Deckert研究室のTERS測定技術および装置の構築方法を習得した。中でもAFM探針に銀ナノ粒子をコートするTERS探針の作り方について、その大まかな手法を理解した。続いて研究の方向性について渡航後にDeckert教授本人と綿密なディスカッションを行った結果、自由な発想を元に一から再度新たな研究方針を立てることとなった。まずはDeckert研現有の実験装置で単分子ラマンのTERS測定が可能か理論・実験の両面からチェックしたが、残念ながらネガティブであった。次に金ナノプレート上に4-ニトロベンゼンチオール(4-NBT)の単分子膜を形成し、探針-金属ナノプレート間の距離を変更しながらTERS測定を行うことで、銀ナノ粒子表面の電子の様子と4-NBTの化学変化との関連を調べることとした。まずは既にDeckert研で論文発表実績のある金ナノプレート上の4-ABT単分子膜TERS測定について、必要な技術を全て一から習得した上で追試を行ったが、追試が実現できず、急きょ他の実験をする必要に迫られた。そこで最後に、日本からドイツへ持ち込んだ銀ナノワイヤ表面に付着するポリマー分子のTERS測定を行い、ある程度明確なTERS測定データを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究目標は、ドイツ イエナ大学 Deckert研究室に滞在し国際共同研究を行いながら、TERS を用いたプラズモニック化学反応センシングに関する研究を遂行することであったが、Deckert教授とのディスカッションの結果、必ずしも申請当初の研究テーマに縛られることなく、より自由な形で新たな発想の元に研究テーマを組み立てることとなった。Deckert教授はTERSの原理を世界で初めて実証した研究者の一人のため、世界でもトップレベルの創造性を持つと考えられる。そのため本年度は同教授から直接、創造性や重要性がより高い研究テーマの立て方を教示いただくことで、国際共同研究構築のための重要な礎を得ることができた。 しかし一方で、申請当初の研究テーマの進捗という意味ではあまりはかばかしい成果が得られていないのが実情である。本研究提案内容には一切含まれていないが、他にもドイツ イエナ大学 Deckert研究室に滞在していた間にたまたま、2014年ノーベル化学賞受賞者であるHell教授の研究室に所属するVladimir教授とドイツ現地の学会で知り合い、それをきっかけにHell教授の前で研究提案のプレゼンテーションを行うための研究提案内容作成およびプレゼン資料作成までを直接Vladimir教授から手ほどき頂く機会があった。残念ながらHell教授に実際にプレゼンを行う機会までは得られなかったが、普段直接Hell教授と共同研究を行っているVladimir教授から研究テーマ構築の直接指導を受けたことで、ノーベル賞級の研究成果を挙げるための研究構築方法の一端を学ぶことはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本国際共同研究の目的は、現在SERSを用いて遂行中の分子-プラズモン共鳴間に存在する強結合を元とした反応メカニズム実証研究をさらに発展させ、TERS法を用いてプラズモニック化学反応場におけるプラズモン共鳴の役割を定量的に検証することにある。この目的に従って昨年度は、ドイツに渡航し、TERS法の創始者の一人であるDeckert教授に直接指導を受けながら、TERS法の習得およびTERS測定装置の構築を学んだ。 よって今後の研究については、本来であれば、国内にてTERS測定可能な装置環境を新たに作りつつ、国際共同研究の枠組みを元にTERS測定を国内外で継続し、結果をまとめることが目的となると考えられる。 しかしドイツ Deckert教授およびVladimir教授から学んだ研究の実情に照らし合わせると、過去の方式にとらわれすぎると世界の研究潮流から遅れを取ってしまうだけでなく、より創造的で上流に位置する研究に向かって進むことができにくいことになる。本研究テーマを考案した時期からすでに2年が経とうとしている現在、TERS法そのものが世界では既に成熟・陳腐化しつつあるのが実情であり、そこを追求することに必ずしも新しいサイエンスは存在しないと考えられる。そこで本年度からは、ドイツ Deckert教授およびVladimir教授から教示頂いた研究テーマの立て方を元に、より自由な発想を重視しながら分子-プラズモン共鳴間に存在するメカニズム実証研究を遂行することとしたい。今まで代表者が構築してきたSERS測定手法と、国内の共同研究者である伊藤民武博士との連携を強化し、プラズモニック化学反応に対して銀ナノ粒子のプラズモン共鳴が持つ本当の役割を明らかにしていく。
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Research Products
(9 results)