2016 Fiscal Year Research-status Report
高温圧電センサを指向した高抵抗新規単結晶材料の開発(国際共同研究強化)
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15KK0201
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
武田 博明 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00324971)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 圧電結晶 / 高温物性 / 圧力センサ / 機械強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究では、あらゆる高温圧電センサに展開できる新規材料を提案することを目的に、代表者が見いだしたメリライト型結晶Ca2Al2SiO7(CAS)をベースとして、高抵抗かつ高強度をもつ新規圧電結晶を合成し、その高温物性を明らかにし、さらに高品質バルク結晶を育成する。 本年度は、CASの結晶構造内の(Al,Si)O4四面体層間に位置するCaサイトに対して、Srを置換させた結晶を合成し、その単結晶育成と電気的・機械的特性について調査した。結晶組成はCaSrAl2SiO7(Sr-CAS)とし、共同研究先の設備であるLHPG法で融液成長が可能であることを確認した。さらに、チョクラルスキー法により育成したところ、無色透明でクラックがほとんどない、明瞭な平行面が現れた単結晶が得られた。圧電特性評価により、Sr-CAS結晶の電気機械結合定数、圧電定数はCAS結晶からわずかに低くなるものの、弾性コンプライアンスも低くなり、Sr置換により弾性的に固くなることがわかった。圧縮破壊強度はSr-CAS結晶で170 MPaを示し、CAS結晶で得られた140 MPaより大きいことがわかり、Sr置換によって圧縮破壊強度の向上が見られた。また、Sr置換により圧縮歪みが低くなり、これは電気的特性から求めた弾性コンプライアンスが低くなることと一致する。さらに、回転カット基板を工夫することで、破壊強度がさらに向上できることをシミュレーションの結果から見いだした。電気的特性と機械的特性の結果を合せて、Sr-CAS単結晶は燃焼圧センサ応用へ向けてCAS単結晶よりも優位であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した研究計画は、(1)CASをベースとした異種元素置換による新規結晶を育成し、基礎物性を明らかにすること、(2)新規結晶の高温での圧電・誘電特性・抵抗率等の各種電気物性を明らかにすること、(3)項目(1)(2)で見いだした結晶に対して、その均一組成をもつ高品質なバルク結晶を育成し、高温電気・機械物性を明らかにすることである。本共同研究は平成28年度~平成30年度まで行われる。本年度は置換元素としてSrを用いたSr-CAS結晶を作製して、上記すべての項目について検討した。研究実績の概要にもあるように、Sr-CAS結晶の圧縮破壊強度はCAS結晶より大きく、Sr置換によって圧縮破壊強度の向上が見られた。ただし、(2)の高温における各種特性評価が年度内にて間に合わなかった。以上より、達成度は80%と判断され、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の中間年度である平成29年度にはさらなる高強度化に向け、CaサイトへBa置換、(Al,Si)O4四面体層間への元素置換を行い、新規材料を探索する。本年度において、弾性定数と破壊強度の関係が明らかとなった。この成果を基に、弾性定数をシミュレーションできる第1原理計算により置換元素を設計する。低い弾性定数が見込める化学組成に対して、共同研究先の現有設備であるLHPG法を用いて単結晶化を行い、引き続き、現有設備であるチョクラルスキー法にてバルク単結晶化を行う。作製結晶の基礎物性評価と共に、高温評価システムを構築する。得られた成果は取りまとめ学会発表および論文発表を行う。
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