2017 Fiscal Year Research-status Report
高温圧電センサを指向した高抵抗新規単結晶材料の開発(国際共同研究強化)
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15KK0201
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
武田 博明 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00324971)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 圧電結晶 / 高温物性 / 圧力センサ / 機械強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究では、メリライト型結晶Ca2Al2SiO7(CAS)をベースとして、高抵抗かつ高強度をもつ新規圧電結晶を合成し、その高温物性を明らかにし、さらに高品質バルク結晶を育成する。 本年度は、CAS結晶のCaサイトに対して、Srを固溶限界まで置換させた結晶を合成し、その単結晶育成と電気的・機械的特性について調査した。チョクラルスキー法により育成したところ、組成がCa0.75Sr1.25Al2SiO7(CSAS125)まで無色透明でクラックがほとんどない単結晶を得られた。圧電特性評価により、SCAS125結晶の電気機械結合定数、圧電定数ともに昨年度育成したCaSrAl2SiO7はより低くなるものの、圧縮破壊強度は175 MPaを示し、さらに水晶と同程度の圧電定数をもつ(XYt)25oカットにて圧縮強度を220 MPaまで上昇させられることがわかった。本年度より第一原理計算を用いたメリライト型結晶の圧電性の発現メカニズムの解明に着手した。その結果、メリライト型結晶における圧電定数e14に関係する分極の発生は酸素8配位であるAサイト変位による発生分極が正に寄与し、酸素4配位であるBサイトの変位による発生分極が負に寄与していることが分かった。結晶構造変化からBサイト四面体構造の変形とAサイトが概ね分極発生方向に変位し、Bサイトの原子が分極発生方向と逆の方向に変位している様子が見られた。さらに、メリライト型結晶の酸素8配位であるAサイトの多面体歪を増加させる元素を置換すれば、圧電定数e14を増加させることができるということが分かった。 渡航先のLebbou教授が2017年8月14日~17日に来学し、共同研究内容の議論を行い、CASへの置換元素の検討と渡航した際の単結晶育成の計画を練った。このことにより渡航時における実験がスムーズになり、渡航期間が想定より短縮することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した研究計画は、(1)CASをベースとした異種元素置換による新規結晶を育成し、基礎物性を明らかにすること、(2)新規結晶の高温での圧電・誘電特性・抵抗率等の各種電気物性を明らかにすること、(3)項目(1)(2)で見いだした結晶に対して、その均一組成をもつ高品質なバルク結晶を育成し、高温電気・機械物性を明らかにすることである。本共同研究は平成28年度~平成30年度まで行われる。本年度は昨年見出したSr置換した結晶からさらに置換量を増やし限界まで固溶させたCSAS125結晶を作製して、上記すべての項目について検討した。研究実績にもあるように、CSAS125結晶の圧縮破壊強度はさらに大きくなり、回転カットを工夫することで220 MPaまで圧縮破壊強度を向上させることができた。さらに、第一原理計算を用いることで圧電特性を向上させるための指針がえられ、本申請研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度である平成30年度には高強度を保ちつつセンサ応用に十分な圧電定数をもつ結晶の開発に向け、ある特性のサイトを中心とした置換ではなく、結晶構造を俯瞰した新規組成を考案し、融液成長が可能な単結晶材料を探索する。本年度において、第一原理計算より圧電定数を向上させる指針が得られた。その指針に従って考案した組成の結晶について、共同研究先の現有設備であるLHPG法を用いて単結晶化を行い、引き続き、現有設備であるチョクラルスキー法にてバルク単結晶化を行う。作製結晶の基礎物性評価と共に、高温評価システムを構築する。得られた成果は取りまとめ学会発表および論文発表を行う。
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