2017 Fiscal Year Research-status Report
遡上帯-砕波帯-沖浜帯における底質の鉛直再配分および岸沖移動動態メカニズムの解明(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0202
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 崇之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90397084)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 底質岸沖移動動態 / 底質混合厚 / 底質分級 / 沿岸流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は遡上域から沖浜帯までを研究対象領域とし,現地観測結果に基づいた,前浜に形成されるバームからバー沖側端までの底質移動の動態解明,および鉛直混合メカニズムの解明を目的としている.H29年度は5月に波崎海岸において蛍光砂とコアサンプリングを用いた底質の鉛直・岸沖動態把握に関する現地観測を実施した.この観測で,底質の岸沖移動動態の把握に加え,底質鉛直混合についても評価できるよう調整を行い実施した.8月末の渡米後,これまで波崎海岸において実施し得られた観測データの詳細検討を実施している.アウターバーの有無が底質の岸沖移動動態に与える影響に関しては,現地観測データに加え,数値シミュレーションによる波浪場推定を実施し,流速場を加えた検討を開始した.また,堆積性波浪場での現地観測データを用い,インナーバーとアウターバーの形成メカニズムを検討し,これら両領域の堆積にはどの領域から移動してきた底質が大きく寄与しているのかについて検討を行っている.また,底質動態場に影響を与える,沿岸流速データに関しても詳細解析を実施し,沿岸流速推定モデルの開発,および沿岸流速値の超過確率と潮汐との関連性について検討を行い,アウターバー領域においては干潮位の際には流速場の超過確率が約2倍になっていたことが明らかになった.現在これらの成果について論文をまとめており,H30年度には複数投稿出来る見込みである. 一方,オレゴン州立大学所有の大型水路を用いた底質移動動態実験に関しては,他研究者らのプロジェクトの遅れ等から開始時期が遅れている.しかし,小型水路を用いた底質分級に関する実験を新たに開始させた.水路において押し波を発生させ,これにより複数の粒径を混合させた底質がどのように分級しながら輸送されるかについての検討を開始した.今後,底質粒径の配合等を変化させ,検討を加えてゆく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度まで波崎海岸において実施し得られたデータの詳細検討を行い,アウターバーの有無による岸沖底質移動動態の変化については,数値計算での検討を残すのみとなっている.また,沿岸漂砂に大きく寄与する沿岸流速に関する検討については,沿岸流速岸沖分布推定に関する提案式を構築したと共に,沿岸流速の超過確率についても検討を行い,アウターバーを有する海浜地形形状においては,潮汐,および岸沖方向位置が沿岸流速に大きく寄与していることを示した.これら両検討内容に関しては,論文を執筆中であり,H30年度には投稿できる見込みである.また,H29年度に実施した現地観測データについても詳細検討を開始し,底質鉛直混合に関する検討を行っている. 一方,予定していた大型水路を用いた室内実験に関しては,他の研究者らによる実験の遅れ等から開始時期がずれ込んでいる.大型水路は複数の研究グループにて共同利用されていることから,共同研究者らと共に開始時期を検討していく.大型水路での実験が延期されていることから,小型水路を用いた底質分級に関する検討を新たに加え,実験を進めた.実験手順,解析方法について概ね方針が立ち,今後は底質粒径の組み合わせ等を変化させ,実験を継続してゆく. 研究計画に対し,検討項目により進捗に差があるものの,研究項目全体としてはおおむね順調に活動が行えている.共同研究者との研究打ち合わせをほぼ週1回のペースで実施し,研究解析については概ね順調に進み,また,研究成果も出てきている.加えて,投稿済み,さらに投稿予定の論文も複数あるため表記の達成度とした.
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Strategy for Future Research Activity |
波崎海岸においてH29年度まで実施してきた,底質移動動態に関する現地観測での各種取得データの詳細解析を適宜進める予定である.アウターバー有無による底質移動動態への影響に関しては,数値計算を組み合わせた検討を実施する.また,沿岸流に関する検討に関しては,共同研究者との議論は概ね終了したことから,今後,論文を投稿する上での詳細検討を行い,H30年度中での投稿を目指す.これらの内容の一部に関しては,H30年度の国際学会にて発表を予定している.H29年度に実施した現地観測にて得られたデータの解析に関しては,共同研究者との議論も加え,引き続き解析を継続する.特に,鉛直混合に関し,その岸沖分布,混合深さについて着目し,H28年度の以前の観測データ,既往研究のデータ等も統合し検討を進める.加えて,現地観測で取得した高頻度底質サンプリングデータ,および沿岸方向底質サンプリングデータについても,順次詳細解析を開始してゆくこととする.論文執筆に関しても,各解析テーマについて適宜進めてゆくこととし,H30年度には複数本投稿することを目標とする. 大型水路の実験に関しては,引き続き共同研究者らと議論し,対応していくこととする.実験については,バー地形が岸沖・鉛直底質移動量に与える影響度の解明,バーム地形侵食時における底質移動動態についての検討を行うこととしているが,大型水路の状況に対応できるよう複数案を検討する.また,新規に実施を行っている小型水路による底質分級実験に関しては,H29年度の検討により実験開始から解析までの大枠の流れが把握できたことから,実験に使用する波浪場,底質粒径の組み合わせ等の検討を行い,H30年度の本実験開始,および解析までの実施を目指す.
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