2017 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導テラヘルツ光源の時間領域コヒーレンス測定と元素置換による高強度化(国際共同研究強化)
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15KK0204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80302389)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | テラヘルツ波 / 固有ジョセフソン接合 / 時間発展観測 / 円偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、高温超伝導体からのテラヘルツ発振の時間発展観測と放射テラヘルツ波の偏光制御をおこなった。 (1)時間発展観測:3月から9月までの渡航でEcole Normale Superieure (ENS)のテラヘルツ時間発展分光計を用いて実験を行った。高温超伝導体薄膜を用いた透過測定で実験装置の特性、テラヘルツ分光に関する技術を学んだ。次に、LAO基板上に接着したBi2212単結晶を薄くへき開し、80ミクロン幅のストライプ状に加工した試料の透過スペクトルを測定した。その結果、0.5THz付近と2 THz付近に吸収が観測された。それぞれ、ジョセフソンプラズマ共鳴とフォノン振動と関係すると考えられる。その後、テラヘルツ発振素子をTH-TDSに導入し、発振条件にバイアスして透過測定を行ったが、バイアスの有無による差は観測されなかった。帰国後、この結果を踏まえて京都大学において素子と照射電磁波のカップリングを改善するためにデバイス形状の変更を行ったのち、2月から再度渡航してバイアスされたテラヘルツ発振素子に関する実験を行った。 (2)偏光制御:ENSにおいて、円偏光素子の分光実験を行った。円偏光素子から発振電磁波を分光したところ、バイアスに変調を加えることで単一の発振周波数が、最大3に分裂することがわかった。帰国後に、フランスで得られた経験をもとに京都大学の測定システムを改善し、発振強度、周波数、および偏光が容易に測定できるようにした。電場の回転方向を特定するため、4分の1波長板を用いて、ストークスパラメータの測定を行った。2月からの渡航では、チュービンゲン大学でLTSLM測定を行い、ストークスパラメータから予想される回転方向と温度分布の対応を明らかにした。また、ENSのTHz-TDSで4分の1波長板が設計通りに動作しているかを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間発展の観測に関しては目的とする成果はまだ得られていないが、必要な条件が解明しつつある。フランスでの経験を生かして、京都大学の測定系を改良できたことは大きな進展である。また、フランス側の協力を取り付けて申請した二国間事業は不採択だったものの、継続的に申請をしていくことで、今後の成果への可能性が高まっていると言える。偏光制御に関しては、フランス・ドイツ両者の実績を生かした国際共同研究が有効に機能しており、執筆中の国際共著論文が1編、さらに2編の論文を執筆できる材料をすでに得ている。 上記ホスト研究グループに加え、仏、英、蘭、独の7グループを訪問し、共同研究のための議論を行ったことは、本研究種目の主旨に合致している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年2月に、チタンサファイアレーザーとTHz-TDSが京都大学の研究代表者の研究室に移設され、ENSの装置に近い自由度の高い時間領域分光測定が可能になった。今後は、この装置を用いてテラヘルツパルスと発振素子の結合を観測できる。発振素子への直流バイアスに伴う信号が検出されるようになれば、ENSのユニークな技術であるテラヘルツパルスと同期したバイアスをくわえて応答を観測する。また、2018年9月まで外国人の特定研究員を雇用し、発振・偏光測定系の自動化を進めるとともに、国際共著論文を複数編執筆する。その議論のために、6月にENSに1週間滞在する。また、同時期にモスクワ近郊チェルノゴフカで行われる国際会議への招待をうけているので、会議出席後にロシアIREの海外共同研究者を訪問し、共同研究について議論する予定である。
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Research Products
(8 results)