2016 Fiscal Year Research-status Report
タングステンの熱疲労劣化挙動の学理究明による傾斜機能長寿命ダイバータ開発への挑戦(国際共同研究強化)
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15KK0224
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | プラズマ・核融合 / タングステン / 熱疲労 / 長寿命化 / 解析・評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高延性を維持したまま低温での延性消失を克服した積層Kドープタングステン(高延性Kドープタングステンを基にした積層タングステン)を開発することを目的とし、1)積層Kドープタングステンの数値シミュレーション等に基づく材料設計、2)課題1に基づく積層Kドープタングステンの製作、3)課題2で製作した積層Kドープタングステンの疲労寿命の評価、4)課題2で製作した積層Kドープタングステンの衝撃試験による低温延性の実証、5)課題2で製作した積層Kドープタングステンの熱疲労・熱衝撃試験による実機適用性の実証の5課題を計画している。 平成28年度は、カールスルーエ工科大学(ドイツ)およびユーリッヒ研究センター(ドイツ)まで渡航し、前者のMichael Rieth博士およびJens Reiser博士と課題1から課題4について、後者のGerald Pintsuk博士と課題5について、平成29年度の本格的な研究に向けた準備作業として、研究実施計画を策定した。 カールスルーエ工科大学では、同大学における積層タングステンの開発状況を確認し、本研究で開発予定の積層Kドープタングステンの製作条件と熱機械特性評価条件について検討した。その結果、積層Kドープタングステンの製作については中間材と製作雰囲気の適正化が重要であることが見いだされた。これらの検討結果を基に、平成29年度の材料設計、製作および評価に向け、引続き日本国内での研究を含め、準備を進めることとした。 ユーリッヒ研究センターでは、熱疲労・熱衝撃試験に使用する試験片仕様や試験装置、試験条件について検討した。素材の熱機械特性評価結果を精査した上で、平成29年度の実施に向け最終的に決定することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本格的な研究は平成29年度に実施するため具体的な成果は得られていないが、準備作業として設定した平成28年度の実施計画はおおむね達成されたため、順調に進展していると考えられる。 事前の段階では、科研費の本枠組みの制度詳細が渡航先研究者に伝わっていない面もあったが、準備作業を通じて制度詳細を共有することができ、研究詳細計画が具体化された。また、日本国内で製作した試験片などの渡航先機関への持ち込みに関わる安全保障輸出管理上の事務手続き、ビザ取得に向けた渡航先機関事務担当者との折衝など、事務的に必要な事柄も円滑に進められた。具体的な研究詳細計画、事務的な要件の両者について渡航先機関および研究者と共有でき具体化されたため、平成29年度の本格的な研究がより円滑に運ぶことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1では、高延性KドープWおよび中間材のそれぞれの厚さと、中間材の素材およびその材料特性をパラメータに、Wと中間材の間の拡散挙動や、積層化後の熱伝導特性や機械特性をシミュレーション計算により評価し、最適な材料設計条件および製作条件を明らかにする。本課題は、主にReiser博士と共同で実施する。課題2では、高延性KドープWの延性を保ったまま薄板化し、その薄板を用いて、課題1の結果に基づき積層KドープWを製作する。本課題も、主にReiser博士と共同で実施する。課題3では、積層KドープWを対象に高温低サイクル疲労試験を実施し、積層化前の素材において発現した長寿命特性が積層化後においても維持されていることを実証する。この疲労試験には、カールスルーエ工科大学の疲労試験機のほかに、東北大学の疲労試験機も並行して使用する。カールスルーエ工科大学における疲労試験は、主にRieth博士と共同で実施する。東北大学における疲労試験においては、本研究で雇用する実験補助者の支援を得る。課題4では、積層KドープWを対象に室温から千数百度までの温度範囲においてシャルピー衝撃試験を実施し、積層化前の素材において脆性を示した温度域における延性の発現を実証する。高温真空中でのシャルピー衝撃試験は国内では実施できないため、カールスルーエ工科大学における実施が不可欠である。本課題は、主にRieth博士と共同で実施する。課題5は、ユーリッヒ研究センター(ドイツ)の電子ビーム照射熱負荷装置JUDITH-2を用いて、積層KドープWを対象に、ダイバータ適用性の実証に必要な熱疲労・熱衝撃特性を評価し、開発する積層KドープWの長寿命特性を実証する。実機適用性が評価可能な実規模熱負荷試験装置は国内にはないため、ユーリッヒ研究センターにおける実施が不可欠である。本課題は、主にPintsuk博士と共同で実施する。
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