2016 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質輸送を制御する -場の環境変化を利用した膜による能動制御-(国際共同研究強化)
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15KK0227
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (60371142)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | タンパク質 / 物質移動 / 物質流束 / 機能性膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した研究実施計画では,本年度は渡航をせず,主として基課題研究において取得した実験データ群の処理を行い,基課題研究における3基軸の研究テーマの確立を図ることとなっている.この計画に基づき物質移動量と周囲環境の関連性を評価した.基課題研究における1基軸である「in vivo 条件下での実験実施と透過膜の性能評価」に基づき,これまでの基課題研究における束縛拡散観察実験結果を整理し,周囲環境条件として定義してきた温度条件やpH 条件等がタンパク質拡散現象にどのような影響を及ぼすかについて議論を始めるデータ整理を開始した.また,物質移動能動制御の可能性を模索した.タンパク質の自由拡散は10の-10乗程度であるが,膜を介することでその値は1/10程度となり,併せてそこから周囲条件を変えることで1/5~1/20程度になるという基課題研究の研究成果から,本研究課題で行う諸種機能性透過膜のデザインに向けた実験事実のデータ整理を行った. 本研究課題は平成29年3月24日に交付があったため,本年度としての研究活動は実質8日間のみであったが,渡航予定先の研究者と基課題における実験データを共有化し,次年度の渡航準備を整えた.具体的には渡航時期を平成30年の2月以降とし,そこに焦点を合わせた実験計画を立案した.この案は先方との協議に基づくものである.長期渡航に必要な査証申請に係る書類の準備は,今夏以降に日仏両サイドで順次進めていくこととなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,本年度は渡航をせず,基課題研究における研究にて取得したデータの処理を集中して行うこととなっており,渡航先研究者と密に連携を取って,次年度に必要なデータの整理を行った.これまでの基課題研究で取得したデータは温度範囲およびpH範囲において広範であるため,今後はin vivo条件下における実験条件においてのデータ分けと整理が必要となる.この点においてはまだ進めておらず,今後の早急の課題となる.またそのデータは,次年度以降の渡航の際に必要であることから,渡航先での実験的研究が速やかに遂行されるよう,取り扱いの容易なデータとして纏め上げることも要求される.以上の理由により,本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書では基課題研究終了後の秋季より渡航を計画しているが,その渡航時期を変更する.計画書では2017年10月より6か月の渡航を計画していたが,2018年2月より二期間に亘って計6か月間渡航する.これは,渡航先での効率的な研究推進を考慮し,国内での拡散場観察実験によるデータの取得をより充実したものにするための措置である.具体的には,これまでの実験で得られたデータを基にタンパク質拡散の能動制御が可能な機能性透過膜の生成を行い(一回目の渡航),これによる拡散実験の後,より高精度に制御を可能にする膜のデザインを渡航先にて行い,それをフィードバックさせた実験を再び日本側で行う.再度,このデータを用いて機能性透過膜の生成を行う(二回目の渡航).この研究の推進のためには,フランス国との国際共同研究を組織的に行えるように研究コミュニティの充実化を図る.日仏研究者各々が所属する研究チームを融合させた研究コミュニティを構築し,基課題研究期間に得られた知見を基に,ヒト体内における代表的な複数種タンパク質移動の能動制御の可能性について材料工学の観点から議論し,実験に必要な機能性透過膜をデザイン・提供する.
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