2018 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質輸送を制御する -場の環境変化を利用した膜による能動制御-(国際共同研究強化)
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15KK0227
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (60371142)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | タンパク質 / 物質移動 / 物質流束 / 機能性膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ヒト体内環境下においてタンパク質の物質輸送現象を能動制御でき得る機能性透過膜の実現を図ることを目的としている.機能性透過膜の提供を受けるにあたって,渡航先外国機関と綿密な打ち合わせを行い研究を進めてきた.交付申請書に記載した研究実施計画では平成30年度秋季に渡航を予定していたが,準備のために夏季に1か月滞在し,11月から本格的な長期滞在を行った.本年度は主として渡航先外国機関にて機能性透過膜を用いたタンパク質の束縛拡散観察実験をパラメトリックに行い,広範な条件下におけるタンパク質の膜透過量の評価を行ってきた.昨年度中に基課題研究課題で得た実験結果を整理し,周囲環境条件として定義してきた温度条件やpH条件等がタンパク質拡散現象にどのような影響を及ぼすかについて渡航先の研究者と複数回議論し,仕様決定した代表孔径とその許容孔径分布を満たしている機能性透過膜,および隔壁の材質の違いによる電荷チャージ量の異なる仕様の透過膜の提供を受けた.これらの透過膜を用いて実験を行い,膜の厚さは0.5mmで一定とした.また,これらの機能性透過膜の他に代表孔径が5~10マイクロメートルのミリポア膜も用いて実験を行った.これらの実験結果を比較することで,孔径サイズが物質拡散に及ぼす影響について評価した. また,実験の合間に海外共同研究者のSébastien Livi研究員およびJean-Yves Cavaille教授と,今後の機能性透過膜の使用についても議論を行った.相手先の機関では本年度中にも多くの新たな機能を有する膜材質を開発しており,これらの新材料がどのように本研究に利用できるかについても検討し,機能性透過膜の膜壁の濡れ性について制御可能かどうかの意見交換を行った.一旦は本研究は終了するが,今回の渡航で築いた国際研究コミュニティを維持し,引き続き研究を進めていくこととした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を前倒しして準備のための渡航を設けたことで,渡航先外国機関にて効率的に実験を実施することができた.交付申請書に記載した研究実施計画に照らし合わせて,おおむね計画通りに研究を進められたと判断することができる.昨年度構築したシステムに不具合も生じず,また相手先からの透過膜提供も滞りなく進み,計画に沿った進展となった.予定していた実験パラメータ範囲を網羅するデータの取得もでき,各実験においてもデータの確度向上のため5回の測定を行い,定量評価が行えるデータを取得した.また,渡航期間中は次のステップに向けた議論を海外共同研究者とともに行うことができた.以上の理由により,本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の長期渡航をもって,当該研究の海外滞在における部分は概ね終了した.今後は取得した実験データの解析に集中し,必要に応じて追加実験を実施することとする.実験データの解析にはある程度の時間を要し,また場合によっては詳細な高精度観察実験を行う必要があることから,本研究で構築した可視化観察装置は1年ほど現状維持をしておき,いつでも利用できるようにしておく. また,昨年度までに得られた実験成果を発表するための論文作成を加速させる.相手先機関滞在時に海外研究協力者とは打ち合わせを行っており,論文構成の概要は同意できている.翌年度初頭に初稿を基に会合を持ち,論文を完成させていく. 今回の国際共同研究加速基金プロジェクトでは,海外研究機関との国際共同研究コミュニティの形成とその盤石化を行った.今後も海外共同研究者との国際共同研究を組織的に行えるように定期的な研究コミュニティの開催を行い,研究結果・成果の共有化を図る.研究代表者が所属している機関でも,フランス国INSA-Lyonとの間で部局-部局間の研究フレームワークを有しており,今後は研究者間の連携ではなく,フランス側の研究グループと情報を共有することで研究の推進を図っていく.
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