2017 Fiscal Year Research-status Report
腐食疲労における腐食速度予測のための電場/応力場連成解析手法の開発(国際共同研究強化)
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15KK0233
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
桑水流 理 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (40334362)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 環境強度 / 応力腐食 / 電気化学 / 計算力学 / 境界要素法 / 酸化皮膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年3月2日に渡米し、2018年2月2日まで、セントラルフロリダ大学にて訪問研究員としてAlain Kassab教授との共同研究を実施した。Kassab教授およびEduardo Divo准教授(エンブリー・リドル航空大学)が開発した境界要素熱弾性解析コードを改良する形で、腐食解析コードを開発した。並行して、研究代表者の指導学生が福井大学にて実験を実施し、アルミニウム鋳造合金の一定応力下における分極曲線を測定した。本年度は冶具を改良し、疲労試験機から腐食チャンバーに流入するノイズ電流を完全に絶縁することに成功した。これにより従来よりも高精度な電気化学測定が可能となり、応力負荷による僅かな電位変化でも精度よく測定できるようになった。 実験で測定した分極曲線に対して、非線形関数によるフィッティングを行い、腐食解析に使用する非線形分極曲線モデルを作成した。一方、熱伝導問題と腐食電場問題の支配方程式は同じラプラス方程式であるため、弾塑性解析コードの熱伝導解析機能を改良し、非線形分極曲線モデルを境界条件として導入し、腐食電場解析を実行できるようにした。アルミニウム鋳造合金の分極特性に対する応力の影響は、酸化皮膜の力学的損傷により説明できると仮定し、酸化皮膜の力学的損傷モデルを考案した。ただし損傷部の分極曲線は実験で測定できないため、損傷を含む酸化皮膜全体の実験結果と、損傷を考慮した電場解析結果を比較することにより、損傷部の分極曲線を同定する方法を開発した。これにより損傷部の電位低下を世界で初めて定量的に評価できるようになった。この成果は、学術誌Corrosion Science(インパクトファクター5.245)に投稿し、投稿から僅か2カ月で掲載可となった。 今後は、腐食電場解析コードを更に改良し、応力解析と腐食電場解析を連成させ、実際の応力腐食挙動を解析できるコードを開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kassab教授およびDivo准教授との国際共同研究を実施したことにより、短期間で腐食電場解析コードの開発に成功した。この解析コードを利用した酸化皮膜損傷部の分極曲線同定法は一流国際誌に即座に掲載され、研究成果の新規性は高く評価された。ただし、本研究課題におけるシミュレーションの最終目的は、腐食電場と応力場の連成解析であり、応力解析と連成できるように、解析コードを改良する必要がある。現在は、腐食に伴う移動境界の要素更新方法を検討中である。腐食に伴う金属表面の減肉量は腐食電流に比例するが、移動境界による体積減少と腐食電流に相当する減肉量が正確に一致している必要がある。これを実現するには、隣り合った要素同士で腐食速度を調整する必要があるため、局所的な平均化ルールが必要である。この定式化を現在検討中であり、平成30年度中に解析コードに実装する予定である。ただし、確実に成果を得るため、まずは問題を簡略化し、均質材の線形弾性応力場を対象とし、滑らかな表面に限定して開発を行う予定である。 一方、解析と並行して実施している実験では、実験装置の改良に成功し、応力を負荷した状態での電気化学測定を行う装置としては、ほぼ完成の域に達した。今後はこの実験装置を使用して、アルミニウム合金だけでなく、ステンレス鋼などの耐食構造材料に対しても、同様の実験が可能であり、今後の発展が期待できる成果と言える。 以上の状況を総合的に判断して、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化皮膜の電位に対する応力の影響を実験で正確に測定できるようになったので、応力による電位低下を正確に考慮した応力依存型分極曲線モデルを作成可能である。応力解析との連成では、この応力依存型分極曲線モデルにより、金属表面の表面応力に基づき、分極曲線を変更しながら、腐食電場解析を行うこととなる。本研究では線形弾性問題に限定することにより、境界要素熱応力解析コードが応力解析にそのまま使用できる。よって現在の最大の課題は腐食におる移動境界のモデリング方法である。前述の通り、移動境界による体積減少速度が腐食電流に相当する減肉速度と等しくなるように局所平均化ルールを考案し、メッシュ更新の定式化を早急に進める。これに基づき、腐食電場解析コードを改良して、応力場/腐食電場連成解析コードを開発する。研究代表者が帰国したことにより、指導する学生と綿密にコミュニケーションが取れるため、共同研究のアイディアを基に集中的にコード開発を推進する予定である。
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Research Products
(3 results)