2016 Fiscal Year Research-status Report
金属ナノ粒子装荷型グラフェンメタマテリアルにおける2次元プラズモンの動的制御(国際共同研究強化)
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15KK0237
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石川 篤 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90585994)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | メタマテリアル / 2次元原子薄膜材料 / プラズモン / 赤外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元プラズモンの動的制御に基づくチューナブルメタマテリアルについて、その電磁界解析および赤外分光デバイスへの応用に取り組んだ。前者については、対象のメタマテリアルを微小なプラズモン要素の集合体として扱うデジタルメタマテリアルの概念を導入し、その構造最適化・自動設計手法について検証した。メタマテリアルを構成する個々の金属構造をバイナリデータとして扱い、これに対して遺伝的アルゴリズムと3次元有限要素法を組み合わせた独自の自動設計手法を適用した。その結果、赤外光領域に所望のスペクトル応答を示すメタマテリアル構造を自動生成することに成功した。このことを実験的に検証するため、微細加工技術を用いて作製したメタマテリアルについてFT-IR測定したところ、数値解析結果と一致するスペクトル応答が得られ、開発した構造最適化・自動設計アルゴリズムの有用性を確認した。後者については、このような赤外メタマテリアルが示す特異なスペクトル応答や局所増強電場を利用した表面増強赤外分光法への応用に取り組んだ。具体的には、メタマテリアルのプラズモン共鳴と検出対象の分子振動とを一致させることで得られるプラズモン-分子間の共鳴結合と、メタマテリアルが示す偏光回転特性とを組み合わせた新規な直交ニコル表面増強赤外分光法を開発した。これにより、感度低下の要因となる背景光の抑制に加え、メタマテリアル-分子結合系からの光信号のみを検出でき、大幅な感度向上が可能であることがわかった。C=O官能基を含む有機分子ナノ薄膜を用いた赤外分光実験では、上述の原理に基づく明瞭な分子振動信号を観測し、ゼプトモルレベルの検出感度を実証した。さらに、単一のメタマテリアル構造からなる赤外分光デバイスを用いて複数の分子官能基を同時検出するためには、中赤外光領域におけるプラズモン共鳴の動的制御が有効であるとの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電磁界解析を通して、メタマテリアル内におけるプラズモン要素の空間分布が変化した際の光学応答に関する知見を得ただけでなく、このようなデジタルメタマテリアルの自動設計手法の開発や赤外分光デバイス応用へと発展させることができた。これらの新たな発展に注力したため、2次元原子薄膜材料を用いた実験について幾つか実施できなかった項目があるものの、デバイス作製に必要となる微細加工技術は確立できており、次年度に向けてこれらの進捗を加速できる状況にある。以上の結果から、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実施状況を踏まえ、デジタルメタマテリアルの自動設計および赤外分光デバイスへの応用を引き続き探索すると同時に、2次元原子薄膜材料を用いたチューナブルメタマテリアルの作製にも取り組む。デジタルメタマテリアルについては大きな進展が期待できるため、パターン認識や機械学習といった新たな技術を導入することで、効率的な構造最適化・自動設計手法への発展を目指す。赤外分光デバイスへの応用については、カイラル構造が示す特異な局所増強電場を用いた新規な赤外分光法の開発に取り組む。チューナブルメタマテリアルでは、すでに確立した電子ビーム露光およびリフトオフプロセスからなる微細加工技術を用いて原子薄膜材料-金属ナノ構造複合材料を作製し、その電気的・光学的評価に取り組む。2次元プラズモンの動的制御に基づくチューナブル特性の検証を進め、デジタルメタマテリアルや赤外分光デバイスとの融合を図る。
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Research Products
(12 results)