2016 Fiscal Year Research-status Report
水中の疎水性表面間に働く長距離性引力の本質と起源の探究(国際共同研究強化)
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15KK0238
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石田 尚之 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80344133)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 疎水性引力 / 原子間力顕微鏡 / 相互作用測定 / 作用メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、溶液中の疎水性表面に働く引力の作用メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行う。本年度は、疎水性引力のメカニズムを明らかにするための基礎的検討として、引力の表面サイズ依存性について評価を行った。具体的には、数nm~数100nm程度の様々な大きさを持つAFM探針と数umの大きさを持つコロイドプローブを用い、その表面を炭化水素により疎水化して、水溶液中での引力の精密測定を行った。 その結果、引力の作用範囲は、表面の曲率半径が100~200nm付近で急激に変化し、これよりサイズの小さい表面での作用範囲は、大きく減少することが確認された。これは、このサイズ付近を境に引力の特性が変化していることを示唆していると考えられる。炭化水素鎖の長さを変化させても同じ傾向が見られた。 さらに、これらの相互作用の起源を推定するため、探針の接近速度を変化させて相互作用を測定したところ、表面の曲率半径が約100nmより大きく、引力の作用範囲がより長距離の場合には、引力の作用範囲は接近速度に強く依存した。これに対し、表面の曲率半径が約100nmより小さく、引力の作用範囲がより短距離の場合には、相互作用には探針の接近速度への依存性がほとんど見られないことがわかった。 これらの結果は、表面の曲率半径が比較的大きい場合には、キャビテーションによる気相架橋が引力の起源と考えられるが、曲率半径が小さいとキャビテーションは起こりにくく、他の起源の引力が働いていることを示しており、これが真の意味での疎水性引力であることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は引力の表面サイズ依存性について評価を行い、引力の発生要因が表面の曲率半径によって異なること、曲率半径が比較的大きい場合には、キャビテーションによる気相架橋が引力の起源と考えられるが、小さいとそれ以外の原因が考えられることを見いだした。これは、真の意味での疎水性引力を解明するためには重要な事実であり、次年度のオーストラリア国立大学での研究で、表面付近での溶媒の分子レベルの挙動を詳しく解析し、どう引力発生に関与しているかを追求することで、起源解明につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はオーストラリア国立大学に滞在し、共同研究者であるVince Craig教授のグループで研究を行う。Craig教授のグループで開発された、“Picometre Amplitude Dynamic Force Microscopy (PADFM)”により、疎水(液)性表面での溶媒分子挙動に与える、表面疎水度や溶媒の種類、温度の影響を詳細に検討し、引力の特性と比較することで、表面における溶媒分子の構造性や吸着層の有無および状態(厚さ・強度など)がどのように引力に関連しているかを見いだす。これに加え、探針と表面の横方向の運動における微小な摩擦力も測定することで、表面近傍における溶媒分子のミクロな挙動を評価し、引力との関連を検証する。
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