2016 Fiscal Year Research-status Report
異種のポリマ‐ポリマ複合化を実現する新しい1次元分散型異方性複合材料の創製(国際共同研究強化)
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15KK0244
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀田 篤 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30407142)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | 複合材料 / コンポジット / ファイバ / エレクトロスピニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポリマー複合材料を作製するにあたり、材料どうしの機械的な複合と化学的な相溶という2種類のスケールの違う観点に着目している.その2点を融合化することにより、研究代表者が基盤研究Aで実験的に実現しようとするナノ複合材料の研究をおし進め,その複合化を実現し,効率のよい新しい複合材料を創り出すことを最終目的としている。基盤研究Aでは、高電圧でポリマー溶液を紡糸するエレクトロスピニング(ES)法を用いて、1次元ナノポリマー分散材を作製し、ポリマー母材への機械的複合化を実施している。機械的に複合化したトップダウン型のポリマー複合材料と化学的に相溶させたボトムアップ型のポリマー材料との融合点で重要なのは、機械的複合で生じた界面のエラー(低接着、ボイド等)のボトムアップ対策である。そこで、上記2点から、機械的複合化にあたり相溶性の良い母材と分散材を選定し、空隙等の発生を防ぎ、効率の良い複合材料作製を実現する。2016年度は、海外滞在中にて多くのディスカッションを通して、同種のポリマ分散材を母材に複合化させる「自己強化型複合材料」に着目した。具体的には、母材にポリ乳酸(PLA)、1次元ナノ分散材には通常のPLAより強度の高いステレオコンプレックス結晶を有するPLA(sc-PLA)を選定した。はじめに、ES法におけるsc-PLAの1次元ナノ分散材の作製条件の最適化を行った。ジクロロメタン/ピリジン混合溶媒を用いてESを実施したところ、平均直径370 nmの1次元sc-PLA分散材が得られた。次に、1次元sc-PLAナノ分散材を、質量分率を15 wt%として予備実験的に複合した結果,複合材料の貯蔵弾性率は、透明性を守りながら、80℃においてPLAの20倍近くになった。このことから、化学的に相溶性を考慮したポリマーで、界面空隙のほとんどないポリマー複合材料を作製できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、機械的な複合と化学的な相溶の2点にスポットを当て、ポリマーの複合材料の作製を行った。ポリマーの機械的複合化に際して相性の良いポリマー母材とポリマー分散材の選定をし、両者の間の空隙等の界面エラーの発生を抑制することを目標としてきた。研究成果としては、ポリマー母材にポリ乳酸(PLA)、そしてポリマー強化材である1次元ナノ分散材には通常のPLAより強度の高いステレオコンプレックス結晶を有するPLA(sc-PLA)を選定することが決定した。さらに、それら強化材と母材を複合させることで「自己強化型複合材料」に着目し、その作製条件を最適化し実験パラメータを選定した。具体的には、ナノファイバー作製ではエレクトロスピニング(ES)法によって、その作製条件の最適化により、sc-PLAの1次元ナノ分散材を最終的に作製できるようになった。さらに、合成したsc-PLAの1次元ナノ分散材を母材のPLAに複合化した。できた複合材料は分散材―母材の界面からの光散乱をほとんど生じない、すなわち界面をほとんど考慮しないで作製できるポリマー複合材料であった。また、力学物性においては、複合化していないPLAの20倍近くの貯蔵弾性率を予備実験において実現することができた。以上より、ポリマーの機械的複合化に際して、両者の間の空隙等の発生を抑制した、界面エラーの少ない複合材料作製を実験的に作製できた。なお、これらの成果については、第65回高分子討論会およびAPS March Meeting 2017にて成果発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験において、これまでに作製できた自己強化型複合材料のように、界面の存在をほとんど考えずに作製できるポリマー複合材料を、どのポリマー母材およびポリマー分散材の組み合わせにおいても実現できるようになることを最終目的とする。そのために、表面改質処理等によって、1次元ナノ分散材の表面を、母材と同種の材料に改質した複合材料等に着目していき、今後の推進方策にする。また、研究実績の概要にもあるとおり、さまざまな種類の1次元ナノポリマー分散材を複合化させたポリマー複合材料を作製し、その力学物性を、機械的複合および化学的相溶性の2つのアプローチから、理論的にそして定量的に考察できるようになることも今後の大きな目標の1つである。そのためにもカリフォルニア大学のFredrickson教授らと引き続き議論を進めていく。以上により、実験的なアプローチにより得られた数値と理論的に得られる数値との検証を行い、最終的に、ポリマーのナノ複合材料に適用できる新しい複合化手法およびその対策を、科学的に提唱できるようになることが、本研究の最終目標でもある。
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