2016 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアオートファジーの分子機構の解明(国際共同研究強化)
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15KK0253
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアオートファジー(以下、マイトファジーと略す)は、オートファジーが選択的にミトコンドリアを分解する現象であり、細胞内の余剰なミトコンドリアや機能低下に陥ったミトコンドリアを分解除去することでミトコンドリア品質管理を行っていると考えられている。我々はこれまでに、酵母をモデル生物とし、マイトファジー必須因子であるAtg32の発見を含む、マイトファジー分子機構の一部を解明してきた。マイトファジーが誘導されるとミトコンドリア上のAtg32がリン酸化され、リン酸化されたAtg32とAtg11が結合することでミトコンドリアがオートファジーで分解されるようになるが、Atg32のリン酸化を制御する機構はほとんど解明されていない。一方で、我々を含む国内外の研究グループが網羅的なマイトファジー関連遺伝子のスクリーニングを行っているが、その中に、Atg32リン酸化制御に関わる因子は含まれていそうにない。このことは、従来の研究手法や広く使われている出芽酵母遺伝子破壊ライブラリーを用いた探索では、Atg32のリン酸化制御に関わる因子を同定することは難しいことを示唆する。本研究は、これまでの研究では解明されてこなかったAtg32リン酸化制御を含む新たなマイトファジーに関連する因子を同定し、その機能解析を行い、マイトファジーの分子機構をより詳細に理解することを目的とする。平成28年度は、国際共同研究の準備として、新たなマイトファジー観察法の開発を行った。また、平成29年2月からミシガン大学における共同研究を開始し、日本で行ってきた酵母を用いた新しいマイトファジー観察法が再現性良く機能することを確認できた。今後は、この手法を用いて、新たなマイトファジー因子の探索を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ミシガン大学に共同研究に行くための準備とミシガン大学での研究のセットアップに多くの時間を使ったこと、また、ミシガン大学での研究開始が2月からであり実質的な共同研究は2ヶ月間だけあることなどから、研究自体には大きな進展は見られていない。しかしながら、日本において新しいマイトファジー観察法を樹立できたこと、その方法がミシガン大学でも同じように再現できていることは、研究基礎となる部分は既に完了したことを意味し、今後は、新規マイトファジー因子の同定に向けて、研究を加速させるだけである。 また、長期的な国際共同研究体制を確立するという点においては、計画代表者以外に学生を短期間、ミシガン大学に受け入れてもらいオートファジーに関する研究手技を取得させることができた。来年度以降も継続的に学生を派遣し、長期的な共同研究体制を築いていく予定である。 こうしたことから、本研究はおおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ミシガン大学が保有している様々な酵母変異株、更には新たに作成、収集する酵母変異株を用いて、樹立したマイトファジー観察法でマイトファジーがどの程度起こるかを観察し、マイトファジーに必要な新規因子を同定する。同定した因子の中で、特にマイトファジー誘導制御に関わると考えられるもの(種々のシグナル経路に関わることが知られているもの)を中心に、その機能解析を行い、マイトファジー誘導機構を明らかにする。また、同定した因子に哺乳類ホモログがある場合、哺乳類培養細胞を用いてその因子が本当にマイトファジーに関わるかどうか、その分子機構を含めて解明する。さらに、マイトファジーに必須の因子が哺乳類で同定できた場合、そのノックアウトマウスを作成し、表現型の解析を進める。 平成29年9月から約2ヶ月間、新たに学生をミシガン大学に受け入れてもらい、継続的な共同研究体制を確立する。
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