2017 Fiscal Year Research-status Report
PRDM14による塩基除去修復を介した能動的脱メチル化機構の解明(国際共同研究強化)
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15KK0262
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
関 由行 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (20435655)
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Project Period (FY) |
2015 – 2018
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Keywords | 始原生殖細胞 / アホロートル / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アホロートル生殖細胞形成に関わる遺伝子カスケードに基づいて、マウスで保存されていないヒト生殖細胞形成カスケードの同定を目指して研究を行っている。 (1)ヒト始原生殖細胞形成機構の解明 共同研究者のアンドリュー・ジョンソン博士のグループによって、bFGFの下流で働くELK1-MED23がアホロートル生殖細胞形成に必須であることが示されている。そこで、ヒト多能性幹細胞から始源生殖細胞形成におけるELK1-MED23の機能解析を行った。ヒトiPS細胞でMED23をノックダウンしたところ継代培養が困難であったことから、MED23がヒトiPS細胞の未分化性維持に必須であることが明らかとなった。次に、MED23の下流遺伝子を同定するために、MED23ノックダウン後の遺伝子発現解析を行ったところ、多能性関連遺伝子の中でPRDM14のみ発現が減少することが分かった。また、bFGFの下流に存在し、ELK1のリン酸化に関与するERK阻害剤の添加でも同様の表現型が観察された。これらの結果から、ヒト多能性幹細胞ではbFGFのシグナルによってリン酸化を受けたELK1が、MED23と相互作用することでPRDM14の発現を維持し、未分化性を維持している可能性が考えられる。 (2)アホロート始原生殖細胞形成機構の解明 アホロートルでは多能性細胞が一旦中胚葉性の多能性細胞へと分化し、その細胞から始原生殖細胞が誘導される。そこで、アホロートル始原生殖細胞形成におけるPrdm14の機能解析を行うために、モルフォリノノックダウン実験を行った。その結果、中胚葉性多能性細胞の消失が起きたことから、PRDM14はアホロートルにおいて中胚葉性多能性細胞の未分化性維持に関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アホロートルコロニーのウイルス感染のため、アホロートル胚を用いた解析が遅れていた。昨年度無事コロニーが増えてきたので、今年度は再度渡英してアホロートルを用いた解析を行う予定である。また、ヒト始原生殖細胞誘導に関する実験は、学内の倫理委員会の設置、また研究計画の文部科学省への届け出も終えたため、今年度からヒト始原生殖細胞誘導に関する実験も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ヒト始原生殖細胞形成機構の解明 ELK1-MED23の機能解析を行うために、ELK1及びMED23の条件的欠損ヒトiPS細胞の樹立を行う。現在、ELK1及びMED23をドキシサイクリン誘導的に発現するヒトiPS細胞の樹立は終了しているため、今年度はCRISPR/Cas9システムで内在性ELK1及びMED23をノックアウトする。また、ELK1及びMED23の標的遺伝子を探索するために、ELK1及びMED23のChIP-seqを行う。同様にPRDM14の機能解析を行うために、PRDM14条件的欠損ヒトiPS細胞の樹立を行う。ELK1, MED23及びPRDM14条件的欠損ヒトiPS細胞を用いて始源生殖細胞誘導を行い、ヒト始源生殖細胞形成におけるELK1, MED23及びPRDM14の機能解析を行う。 (2)アホロート始原生殖細胞形成機構の解明 昨年度までにアホロートルにおいてPRDM14が中胚葉性多能性細胞の維持に重要な可能性を示唆する結果を得ている。本年度は、そのメカニズムの探索を行う。アニマルキャップにbFGF及びBMP4を添加することで、in vivoにおける始源生殖細胞形成過程を再現できる系を既に構築している。そこで、Prdm14をノックダウンしたアニマルキャップにbFGF及びBMP4を添加後、遺伝子発現変化をRNA-seqで解析し、Prdm14 KDアニマルキャップがどの細胞系譜へと分化するのか解析する。また、in vivoにおけるPrdm14の発現をin situ hybridization法で解析する。
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